UBEビエンナーレが開幕 彫刻文化に新たな歴史【宇部】
大賞受賞のあいさつをする西澤さん(常盤公園彫刻の丘で)
第29回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)が2日、宇部市の常盤公園彫刻の丘(野外彫刻展示場)で始まった。前日に選考委員会があり、大賞のUBE賞には西澤利高さん(57)=神奈川県相模原市=の「ディスタンス」が選ばれた。入賞8点をはじめとする野外彫刻15点が会場を彩っており、来場者が選ぶ「市民賞」の投票も受け付けている。会期は11月27日まで。
1961年に日本初の野外彫刻展として始まって以来、2年に1度の大規模な公募展として発展。今回は49カ国から299点の応募があった。会期中は彫刻のライトアップ、スタンプラリー、出展作家によるワークショップなどのイベントが行われる。
2日のオープニングイベントでは篠﨑圭二市長が「灼熱(しゃくねつ)の環境、コロナ禍での制作活動に感謝したい。宇部の彫刻運動は戦後の復興や社会問題を乗り越えた歴史でもある。きょう新たな歴史が加えられたが、彫刻という文化を未来に引き継いでいこう。人とアートが直接、触れ合い感動する。そんな芸術の秋を一緒に楽しもう」とあいさつした。
この後、大賞を受賞した西澤さんら入賞者が紹介され、大きな拍手が送られた。子どもたちのダンス演技の後、「1、2、3、ゴー!」の合図で風船が真っ青な秋空に放たれた。
オープニングに合わせて多彩な催しを展開。作家が自身の作品の前で制作の狙い、鑑賞ポイントなどを話す彫刻巡りには人だかりができた。作品の前でダンスや踊りを披露するパフォーマンスでは、来場者が芸術の融合を写真に収めていた。
西澤さんは、岐阜県出身。東京芸術大大学院美術研究科彫刻専攻修了。2013年の第25回展で入選、15年の第26回展で山口銀行賞を受けた。07~19年に、オランダ・デルフトのART CENTER DELFT(アート・センター・デルフト)とデルフト工科大に大型野外彫刻7点を設置した。
各賞の受賞者は次の通り。(敬称略)
▽大賞(UBE賞)=「ディスタンス」西澤利高(神奈川県) ▽柳原義達賞=「Inflating shadow(インフレーティング・シャドー」藤沢恵(埼玉県) ▽毎日新聞社賞=「満―宇部の空気」上田要(京都府) ▽山口銀行賞=「wind whisper(ウインド・ウィスパー)」平山悟(宇部市) ▽宇部商工会議所賞=「月と山、水脈」岡田健太郎(神奈川県) ▽山口県立美術館賞=「わたしはここで」布藤喜帆(滋賀県) ▽島根県立石見美術館賞=「進化景色(森から)」土田義昌(千葉県) ▽島根県吉賀町賞= 「in Wave~Departure(イン・ウエーブ・デパーチャー)」佐野耕平(京都府)
大賞の西澤さん、コロナが変えた〝距離感〟表現
「大賞受賞には、びっくりしている。常盤公園という素晴らしい空間を意識して制作したが、作品と空間がうまく融合した」と西澤さん。
コロナ禍という現在の状況を意識して間仕切り、遮蔽(しゃへい)板として使われるアクリル板を材料に〝距離〟をテーマに制作。縦、横約2・1㍍の作品は透明度の高い2枚のアクリル板を重ねたもの。中央部分がねじれて反転しており、空間の交換、意識の交換を表現した。
「新型コロナにより人との距離感、風景との距離感が変わってきたと感じている。アクリル板越しに眺める向こう側へのアクセス方法とかコミュニケーションの在り方とか、新しい距離感を問題提起した」と作品の狙いを話した。
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