田村駒之助さんの写真を手にするめいの田村みき子さん

　第2次世界大戦後に旧ソ連のシベリアに抑留され28歳で亡くなった三種町出身の旧日本軍伍長、田村駒之助さんの遺骨が今年6月、めいの田村みき子さん（71）＝同町志戸橋＝に引き渡された。厚生労働省が収集した遺骨からDNA鑑定で身元を特定。終戦から78年を経てのふるさとへの帰還に、みき子さんは「まさかこんな日が来るとは思ってもいなかったが、やっと帰って来たふるさとでゆっくり眠ってほしい」と話している。

　みき子さんによると、駒之助さんは8人きょうだいの次男として大正8年に同町志戸橋で出生。みき子さんの母、サタさんの兄。
　昭和18年8月に召集され、弘前二十部隊に配属。厚労省の資料によると、陸軍独立混成第41連隊に所属し、階級は伍長だった。旧ソ連ハバロフスク州の病院で昭和22年8月25日、栄養失調のため亡くなり、現地で埋葬された。
　遺骨は政府の遺骨収集派遣団が平成26年7月に現地埋葬地の「第3762野戦病院・スタールト居住地区第1墓地」から持ち帰った中に含まれていた。みき子さんらめい2人が平成28年に鑑定用の検体を提供し、今年4月に厚労省から一致したとの通知が届いた。みき子さんは「まさか、こんなことがあるなんて」と驚いた。
　6月27日、県の担当者がみき子さんの自宅を訪れ、遺骨を引き渡した。骨つぼを受け取り、「一度も会ったこともないめいの家族のところだけど、やっとふるさとに帰って来たね」と心の中で声を掛けた。骨つぼの中を確認すると、思っていたよりもしっかり骨が残っていたという。「運が良かった、という言葉はふさわしくないかもしれないが、前線で戦死せず、捕虜になり、戦争が終わってから亡くなって埋葬された場所がはっきりしていたから戻って来ることができた」と語る。
　遺骨は仏壇に3週間置いた。「死因が栄養失調だと知ってショックだった。召集前は何を食べていたのか、何が食べたかったのか」などと考えながら、毎朝ご飯を供え、ジャガイモの煮付けも作って供えた。
　遺骨は、7月中旬にサタさんの13回忌と合わせて自宅近くの墓地の墓に納骨。駒之助さんの墓は、死亡通知が届いた翌年の昭和34年にみき子さんの父、文三さんが建てた。納骨の際、墓の下に納骨室がなかったため、遺骨は隣の先祖代々の墓に納めた。みき子さんは「当時はもう遺骨が帰って来るとは思わず、納骨室がない作りにしたのかもしれない」と話す。
　みき子さんは、駒之助さんの命日からちょうど5年後の8月25日に生まれた。田村家の跡継ぎに選ばれたサタさんと祖母のキヨノさんとの会話を聞きながら育ち、「母のきょうだいで成人まで育った男の子は駒之助だけで、祖母にとって大事な大事な一人息子だった。祖母が亡くなってから60年ほどたつが、無念さを思うと今でもつらい」。そして「私が見守らなければ」と宿命を感じ、サタさんが亡くなった後、引き継ぐ形で遺族会に参加してきた。
　今月24日には三種町戦没者追悼式に参列。式の中で参列者の前で遺骨返還の経緯を説明し、「戦没者のめいやおい、孫など戦争を知らない人たちも、みんなで戦争のない世界を守りながら、ふるさとに戻れないでいるたくさんの遺骨が一日でも早く、一人でも多く戻れるように願っている」と語った。
　県によると、旧ソ連からの遺骨返還は平成3年度以降、県内では19件目。市町村別のデータが確認できる平成18年度以降では能代山本で3件目だという。