能代ロケット実験場で研究推進 「液体水素利用」テーマに東京でシンポ
「能代市から水素で社会を変える」と題した水素利用のシンポジウム(東京大浅野キャンパスで)
水素社会構築に向け液体水素の利用を考えるシンポジウム「能代市から水素で社会を変える」が22日、東京都文京区の東京大学浅野キャンパスで開かれた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の主催で、産学官によるパネルディスカッションや基調講演を通し、脱炭素燃料として注目される液体水素の研究を推進する拠点として拡張を計画するJAXA能代ロケット実験場(同市浅内)の可能性を探った。
能代実験場の拡張予定地は、実験場から約2・5㌔南の海沿い約6千平方㍍の土地(同市浅内)で、液体水素47立方㍍を貯蔵できるタンクなどを整備する。水素の漏れや拡散、爆発が伴う大規模実験を行い、貯蔵の安全性などを研究する。事業費は約10億円。近く着工する予定で、7年度の操業開始を目指す。
国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の水素社会構築に向けた実証で事業者に選ばれた東京大と高圧ガス保安協会(東京)からの要望を受けて整備を決めた。
シンポには産学官の約200人が出席。宇宙科学研究所の國中均所長は「能代実験場では水素実験事業が活況になってきた。県、能代市、三種町の理解とNEDOの大規模水素サプライチェーン構築の事業支援を得て、さらに能代実験場を拡大し水素利用に大きく歩みを進める。能代実験場を世界トップクラスの事業拠点として発展させるため関係者が一堂に会し決起集会としたい」とあいさつした。
能代実験場の小林弘明所長は、ロケットの燃焼試験は年間1~2カ月程度で8割が空いている状況だったが、空いた時間を使って液体水素などロケット以外の試験を受け入れるようになったことで、平成24年に50件ほどだった利用件数は令和4年には産学官合わせ約450件まで急増し「随分にぎわいのある状況となった」と説明。また、NEDO事業で平成27年に超高圧液化水素供給設備を、令和元年には大規模水素サプライチェーン向け液体水素機器試験設備を整備し「さらにハイリスクな試験やさまざまな試験に対応するため敷地を拡大し、いろいろな活動に貢献したい」と話した。
パネル討議は三つのテーマに分けて実施。水素ビジネスに力を入れる川崎重工業は能代実験場を活用するメリットについて「小規模の試験で安全性で問題がないなら社内でもできるが、規模が大きくなると近隣への影響も考え、能代でしかできない。ロケット以外の用途で各社の開発で使える施設は世界的にもまれ」と述べた。液体水素を送るポンプを開発する荏原製作所は「大量に液体水素を扱える能代実験場があったから実績をつくれた。支援体制も助かった」と話した。
保安距離を保てる需要に合った能代実験場で人材確保や設備の拡充を要望する意見もあり、小林所長は「来年度は同時に3実験が並行して行えるよう計画を調整している」と説明した。JAXAと共同研究や協業することで人材育成にも役立つとした声もあった。
斉藤市長もパネル討議で登壇し、能代実験場の液体水素貯蔵タンクから発生するボイルオフガスの再利用や、水素関連の開発・実証を行うラボ(実験場)の建設といった構想を掲げ、水素社会実現に貢献しエネルギーのまち能代の推進を図る考えを語った。
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