中国木材能代工場の製材工場が稼働（能代市扇田）

　製材最大手・中国木材（広島県呉市）が能代市扇田の能代工業団地で建設を進めてきた「能代工場」が24日、生産活動を開始した。製材から販売まで集約した一大生産拠点で、この日稼働した製材工場を皮切りに4月に乾燥加工工場、7月に集成材工場と順に稼働する。秋田杉丸太の年間取扱量は県全体の約2割に当たる24万立方㍍を目指す。製材工場で作った板状の半製品は、今後完成予定の工場で乾燥、加工、張り合わせといった工程を経て7月に集成材に仕上げ、出荷する。林業の活性化や雇用創出が期待される。

　能代工場では米代川流域を中心とする県内で集めたスギ丸太を扱い、住宅の柱に使う集成材をメインに製造する。当初は集成材を構成する板材「ラミナ」と呼ばれる半製品を製造し、県外工場で製品に仕上げる計画だったが、選別から製材、製品の出荷、販売まで一貫体制を築いてコスト削減を目指す経営方針に変えた。
　能代工場の敷地面積は能代工業団地3カ所と市が造成した農地、民有地を合わせた44㌶（44万平方㍍）。分譲地がすべて埋まるため団地の拡張を市に要請し、面積は当初計画した31㌶から1・4倍に膨れ上がった。　丸太を半製品にする製材工場、製品に仕上げる加工・集成材工場、集成材を保管する製品棟をはじめ、原木置き場、天日乾燥場、乾燥釜、製造過程で出た端材を燃やして発電するバイオマス発電設備などを整備する。4年4月に着工し、8年秋ごろを予定するバイオマス発電施設の稼動ですべて完成する。投資額は286億円。
　製材工場は昨年12月15日から試運転し、この日の生産開始となった。当初は今月10日ごろの稼働を予定したが、丸鋸など複数の機械に使用する電線が入手困難となり、2週間遅れた。
　完成した製材工場では機械音が響き渡る中、丸太を板状に切断してベルトコンベヤーで運び、板の幅や厚みなどサイズごとに自動的に分けられていった。耳栓を付けた従業員もラインに立ち、センサーで切断面を読み取る機械を操作したり、板に腐れなどがないか目で確認したりした。丸太を切断した後に余った端材はチップ状にして燃料倉庫に運んだ。メーカー担当者も訪れ、機械のトラブルがないか確認していた。
　製材工場で作ったラミナは乾燥場で3〜4カ月天日干しし、さらに機械で1週間ほど乾燥させ、集成材工場で板を張り合わせ製品に仕上げて出荷する。
　セレモニーもなく、淡々と作業が進められた。松浦健次郎工場長（52）は「人材・資材不足の中、多くの人の協力と努力のおかげで何とか製材工場の生産活動にこぎ着けた。今後は設備の調整、人材教育を行い、早期に安定した稼働ができるよう社員一丸となって取り組む」と意気込む。建設中の乾燥加工工場、集成材工場の稼働に向け設備の設置を続けるとし、「遅れが発生しないよう進捗（しんちょく）を管理し、製品を市場に供給したい。地元を含めた協力会社と連携を深め計画通りの稼働を目指す」と話した。
　森林資源が豊富にあり、まとまった工場用地が取得でき、木材の流通拠点となる能代港があることなどが能代進出の決め手となった。操業後5年以内に250人体制を目指し、うち210人を地元採用する。新卒採用は令和3年度からスタートし、今春は市内の高校生9人を含む24人を採用する。4月時点で中途採用も合わせて地元採用の約100人が新工場で働く。