保全活動が続く葦毛湿原
水田放棄地を復元する贄さん㊨=葦毛湿原で
天然記念物「葦毛湿原」の保全活動が続く。20年近く保護活動をする市文化財センター学芸員の贄(にえ)元洋さんと、豊橋湿原保護の会、豊橋自然歩道推進協議会ら30人はこのほど、今年度初の活動に取り組んだ。
葦毛湿原は、標高60~70㍍の緩斜面に広がる。湧き水によって成り立っている「湧水湿地」として知られ、3万2684平方㍍と東海地方で最も大きい。ミカワバイケイソウやシラタマホシクサなど地域固有の植物も生えている。
贄さんによると、この場所は約800年間、里山として活用されてきたという。当時はここの木がまきとして切られていため、草木がない「はげ山」となっていた。だが1960年代になると、周りにヒノキやスギの木が植えられて森林化が進み、湿原はだんだんと狭くなり、植生の多様性が失われていった。
そこで、65年から保護活動をスタート。92年に県天然記念物に指定され、2013年からは市が大規模な植生回復作業を始めた。市民ボランティアを募集し、豊橋湿原保護の会などが、月数回保全活動する。
水田が放棄され森になっていた場所の木を重機で根ごと引き抜くなどして、湿地や草地の復元を進めている。 また、発掘調査のように地層を細かく管理し、堆積した土を細かくはぎ取り、湿地だった頃の地表面に戻し、埋土種子を発芽させている。
その結果、ヒメミミカキグサなど絶滅種が復活。ミカワバイケイソウの自生数も増えた。これらの功績が認められ、21年には「日本自然保護大賞」を受賞した。
この日の保全活動
この日は、贄さんがガイドしながら、湿原の周りで活動した。チェーンソーで雑草を切ったり、外来種を手で取り除いたりした。
贄さんは「植物の状態を見ながら、今後は葦毛湿原の中心部の保全にも力を入れていきたい」と意欲を見せる。 活動に興味がある人は市文化財センター(0532・56・6060)へ。
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