旧家・祥風庵で60年ぶり 貴重なひな人形120体飾る
60年ぶりに日の目を見た古家家に伝わる古典人形の数々を解説する工藤会長
酒田市本町一丁目の古家(ふるや)家(古布と手作りの店「祥風庵」)で、江戸時代初期に作られた「寛永風びな」や、同中期とみられる「享保びな」をはじめとした貴重なひな人形約120体が展示されている。旧家などが所蔵するひな人形を巡るイベント「春色の酒田雛(ひな)街道」実行委員を務める工藤幸治市芸術文化協会長(酒田あいおい工藤美術館長)の強い勧めで実に60年ぶりに飾ったもので、その愛らしさが訪れた人たちを魅了している。
古家家は、江戸時代末期から昭和時代初期にかけて主に米穀商として財を成し、大正―昭和時代には先祖が酒田米穀取引所仲買人に名を連ねていた。工藤会長が昨年、同イベントでの展示に向け旧知の古家家現当主、古家裕さん(67)と共に家屋内の押し入れに入っていた茶箱、ひな箱の中から「貴重で優れたひな人形」(工藤会長)を見つけた。
「私が上京する前、昭和30年代前半まで母が飾っていた。帰郷したものの、どう飾ったらよいか分からなかった」(古家さん)ことから今回、工藤会長が飾り付けをサポートした。
江戸時代初期に作られたとみられる「寛永風びな」は男びなの烏帽子と顔、首が一体化しているのが特徴。紅花染めなどあでやかな色合いが残る衣装に身を包んだ「六歌仙」、丸々とした顔立ちをした次郎左衛門風の「五人囃子(ばやし)」、烏帽子、冠を除いて男びなが48センチ、女びなが34センチとかなりの大きさを誇る古今びななど、貴重な人形たちが所狭しと並ぶ。
また、古家家に伝わる庄内押し絵や手遊び人形も展示され、訪れた人たちは時がたつのを忘れるかのように見入っていた。古家さんは「旧家に残るひな人形はその家の歴史といえる」と。工藤会長は「愛好家必見の古典人形。実行委員として20年ほど雛街道に関わっているが、市内の旧家にはまだ貴重な古典びなが残っているはず。これからも説得力のある『宝物』を発掘したい」と話した。古家家の展示は4月10日(火)まで、「―雛街道」は同3日(火)まで。
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