モーター燃焼試験成功
能代ロケット実験場で実施された低コスト固体ロケットモーターの大気燃焼試験(10日午前8時ごろ)
JAXA(宇宙航空研究開発機構)宇宙科学研究所は10日、能代市浅内の能代ロケット実験場で汎用(はんよう)材料を用いた低コスト固体ロケットモーターの大気燃焼試験を行った。キャノン電子(本社・東京都)、日本カーリット(同)と共同で研究を進めているモーターで、試験はトラブルなく終了。有用なデータを得ることができ、今後は実用化に向けて改良を重ねていくという。
通常、ロケットに使用する材料の多くは専用のものだが、宇宙研では打ち上げ頻度を向上させるため、固体ロケットモーターに一般工業材料を適用するなどして品質を維持しつつ低コスト化を図る研究を進めている。
今回は、全長約3・5㍍、直径約52㌢のモーターで試験を実施。モーターケースは炭素繊維強化プラスチックをフィラメントワインディング法(型に巻き付けていく手法)によって成型し、固体推進薬としてAP(過塩素酸アンモニウム)系コンポジット推進薬を約1㌧充填(じゅうてん)させた。
モーターやノズルの製造はキャノン電子、推進薬の製造は日本カーリットが担当し、宇宙研が安全審査などを行ってきた。モーターの全長、推進薬量は前回の試験に比べて約3倍にスケールアップしている。
当初は8日に試験を行う予定だったが、西風が続いていたため浅内地区などに煙が飛んでいく可能性があり日程を変更。10日は、午前5時ごろに両企業や宇宙研から約30人が同実験場に集まり、準備に取り掛かった。
作業は順調に進行し、この日は風が弱く海側に向かって吹いていたためコンディションは良好。秒読みを行い午前8時ごろに点火すると、モーターが設置された試験棟から炎と白煙が勢い良く吹き出すとともに、ごう音が響き渡った。
保安主任兼実験主任代理を務める宇宙研宇宙飛翔工学研究系の後藤健准教授によると、燃焼時間は18秒ほどで、推力は最大で約165㌔ニュートンとなるなど、ほぼ計画通りの性能を発揮。両企業との連携もスムーズに行うことができ、モーターだけで考えれば小型ロケットのレベルに達しているという。
また、後藤准教授は今後について「耐熱性など全体的な性能や完成度を上げていき、実際にロケットを飛ばせるモーターを目指していく。宇宙開発への民間企業の参入を促し、国を支える人材の育成にもつながってほしい」と話した。
共同で研究に当たっているキャノン電子と日本カーリットは今後、宇宙開発事業に本格的に取り組んでいくことになるという。
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