世界かんがい施設遺産 庄内町 北楯大堰を登録
農林水産省は14日、庄内町の北楯大堰が本県の施設では初めて「世界かんがい施設遺産」に登録されたと発表した。世界かんがい施設遺産は、建設から100年以上経過し、かんがい農業の発展に貢献したものや、卓越した技術により建設されたものなど、歴史的・技術的・社会的価値のあるかんがい施設を登録する制度。
現在、全国有数の米どころとして知られる立川・余目地域は、1600年ごろまで扇状地の平たんな地形ながら河川より標高が高かったため、水利用の悪い不毛の土地だった。江戸初期、山形城主・最上義光の家臣で狩川城主の北楯大学助利長(きただてだいがくのすけ・としなが)が10年にわたる新田開発調査の末、1612(慶長17)年に立谷沢川から水を引く農業用水路の開削工事に着手。最上川の急流や山裾の地滑りなどに阻まれるなど困難を極めたが、高精度の測量技術や綿密な設計、一日7400人の作業員の動員などによりわずか4カ月で約10キロの水路を完成させたと伝えられる。
その後も次々と水路の建設が進められた結果、約5000ヘクタールが開田し1669年には46の集落が新たに誕生するなど、農村形成に大きく貢献した。庄内平野の礎を築いた利長は、水の恩恵を受けた人々から功績をたたえられ、狩川城跡近くの北舘神社に水神として祭られた。水路は北楯大堰と名付けられ、現在も庄内平野の水田を潤している。
世界かんがい施設遺産は、アジアや欧州、アフリカ、アメリカなど世界77カ国・地域が加盟する「国際かんがい排水委員会」(ICID、本部・インド、ニューデリー)が認定・登録している。農地に水を供給する「かんがい」の歴史や発展を知り、施設の適切な保存が目的。2017年度までに世界10カ国の60施設(うち日本は31施設)が登録されている。今回、国内では新たに4施設が登録されており、北楯大堰の他は五郎兵衛用水(長野県佐久市)、大和川分水築留掛かり(大阪府柏原市、八尾市、東大阪市)、白川流域かんがい用水群(熊本県熊本市、菊陽町、大津町)の3施設。いずれもICID日本国内委員会の国内審査を経て、今月13日からカナダで開かれているICID国際執行理事会で登録が決まった。
北楯大堰の登録決定に吉村美栄子知事は「荒地を美田に変え、人々の暮らしを豊かにし、地域社会の形成と振興に大きな貢献があった北楯大堰が高い評価を得たことは大変喜ばしい。登録を契機に大堰の魅力を国内外に発信し、交流人口拡大や地域活性化につながるよう地元自治体や関係団体と連携して取り組みたい」、原田眞樹庄内町長は「基幹産業である農業、とりわけ400年以上前から米作りを中心に営みを続けてきた本町の歴史に新しい一ページが加えられた。また、これを機に、さらに立谷沢地区を中心とした治山・治水などの歴史を後世にしっかりと引き継いでいく努力をしていく」とそれぞれコメントした。

世界かんがい施設遺産に登録された庄内町の北楯大堰
関連記事
サイクルバスの本格導入へ 田原市が実証運行
田原市はサイクリストの誘客を狙い、21日まで市内を循環する路線バスに自転車用ラックを備えた「サイクルバス」を実証運行をした。期間中、複数の市職員が乗車体験。ラックの使い勝手や周遊体験で得た知見を基...
秋田県知事選の期日前投票始まる 能代山本の有権者、一票に思い託す
任期満了に伴う知事選は21日、県内各地で期日前投票が始まった。4期務めた佐竹敬久知事が退任することに伴い、16年ぶりの誕生となる新リーダーを選ぶ重要な選挙。能代山本の4市町でも、各投票所に有権者...
サメ漁獲で同行体験 乗船しテストツアー 宮総実高生徒
宮古総合実業高校商業科2年生は21日、サメ漁獲同行体験のテストツアーを行った。5人の生徒と教職員が池間漁協所属の漁船に乗船し、サメを釣り上げる様子を見学。帰港後は解体方法を習ったり、試食したりして...
100周年記念誌を贈呈
白保女性会(世持カツ子会長)は21日、創立100周年記念誌「つなぐ」を石垣市と石垣市教育委員会へ寄贈した。 同会は1921(大正10)年に白保婦人会として設立され、郡内で最も歴史の長い女性の会となって...