神社仏閣の「しめ縄」手作りの伝統守る 飯島町の企業が事業立ち上げ 長野県
しめ縄を作る職人を見守る酒井裕司社長(右)
大相撲の土俵をはじめ、長野県飯島町でわら細工を手掛ける「わらむ」は4月、作り手が減少する神社仏閣のしめ縄に関して相談窓口となる神事事業部を立ち上げる。自社製品のしめ縄を販売するだけでなく、神社側が自前で調達することが難しくなっているわらの提供と製作指導をセットで行い、手作りの伝統を守る。自社の人材育成なども強化する考えの酒井裕司社長(48)は「伝統を継承しながら雇用や耕作放棄地対策など、社会問題の解決と地域活性化につなげたい」と意気込む。
◆わら確保困難 作り手も減少◆
酒井社長によると、神社のしめ縄は氏子が作るのが一般的だったが、コンバインの普及でしめ縄に使える長いわらの確保が難しくなり、手作りできる人も減ったため、やむを得ず化学繊維への切り替えも進んでいるという。
一方で2015年設立の同社は、5年前からしめ縄作りを事業化。22年には奈良市の春日大社若宮の式年造替に伴う20年に1度の神楽殿のしめ縄(長さ25メートル、直径14センチ、重さ200キロ)の新調を担った。ほかにも愛知県の大須観音や犬山成田山など70社ほど受け持ち、大小含めて年間約1000本手作りしている。
◆雇用や耕作 放棄地対策に◆
この実績を背景に神事事業部は、困っている神社の相談に応じるため2人の社員と3人の職人で始動。将来的には20人ほどの規模にしていきたい考えで、職人の養成と雇用を進めていく。
全国には約8万5000の神社があるといい、酒井社長は1000社からの受注を目標に掲げる。そのためにはわらの増産も必要となり、耕作放棄地を活用して農家も潤う体制整備を進める考え。
同社は、ひきこもりなど生きづらさを抱える人たちや、障がい者らが作業して収入を得られるよう取り組んでいるが、酒井社長は「この事業を軌道に乗せることで工賃などを向上させ、職人としてプライドを持って仕事ができるようにしたい」と強調する。
問い合わせは、わらむ(電話0265・95・3315)へ。
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