講演が行われた次世代エネルギーフェスティバル（能代市柳町のプラザ都で）

　能代市や能代港湾振興会など主催の「次世代エネルギーフェスティバルin能代」が19日、同市柳町のプラザ都で始まった。教授らの講演や学生の発表会を通じ、洋上風力発電などの再生可能エネルギーや水素エネルギーの最新動向、地域にもたらす活性化の可能性などに理解を深めた。最終日の20日は講演のほか、能代ロケット実験場の施設見学を予定している。

　能代港洋上風力発電拠点化期成同盟会、県山本地域振興局、日本海次世代エネルギー協議会など6団体の共催。脱炭素社会の実現に向け、洋上風力の拡大や港湾機能の高度化への機運が高まる中、発電事業者らと地元事業者による情報交換の機会を提供する目的で初めて企画した。
　行政や風力関係企業など県内外から約50人が出席。港湾振興会、期成同盟会の会長を務める斉藤市長が「東京で開かれた港湾の会議で全国の自治体の長から『能代港をどう活用するかモデルとして注目している』と言われた。カーボンニュートラルに合わせ風力発電がさらに発展するのは間違いなく、その中心にいるのが能代。厄介者の風を追い風に能代の発展につなげたい」とあいさつした。
　講演では、公益財団法人自然エネルギー財団（東京）の大林ミカ事務局長が、風力発電などの自然エネルギーは気候変動対策としてだけでなく各国・地域の発展を支える有望な選択肢になることや、高騰する化石燃料から再エネへのエネルギー転換の大きな流れ、二酸化炭素（CO2）の排出に課金して削減を促すカーボンプライシングといった新たな試みを説明した。
　国の第6次エネルギー基本計画は、2030年までに温室効果ガス46％削減に向け、洋上風力を5・7㌐㍗導入する必要があると試算するが「ウクライナ情勢もあり、他国は導入目標値を上げており、日本ももっと大きな目標であっていい」とした。国内の浮体式洋上風車の導入潜在能力は1千～2千㌐㍗に上ると試算し「沖では予測できないことがあるので、大型化してコストを下げ確実性を高める必要がある」とした。また洋上風力を導入しても都道府県への便益は少ないとし「経済的なインセンティブ（誘因）が必要」と提言した。
　東京大先端科学技術研究センター（東京）の河野龍興（たつおき）教授は、水素エネルギー社会の実現に向け各国の先進事例を紹介。欧州はウクライナ危機でロシアへのエネルギー依存脱却を図り、水素へのシフトを加速する計画で、再エネを用いた水素製造に必要な電解槽を2025年までに現在の約10倍に引き上げる。風力、太陽光の導入量が世界一の中国も再エネを用いたグリーン水素の製造・利活用へ比重を移すとし「再エネから水素を作った方がビジネスとしてもペイする時代が来る。風力から水素を作る時代が近々に来る」とした。
　また、オンラインで国際教養大3年の平栗蒼大さんが再エネが秋田にもたらす可能性、北海道教育大大学院の大久保京介さんが能代での洋上風力と観光業の融合、能代次世代エネルギースクールを受講した地元高校生が風力発電に絡む地域貢献策を発表した。
　近くのイオン能代店では、同市の風力発電の取り組みを紹介する再エネポスター展が20日まで開かれる。