川端龍子と田中一村の接点紹介 一村記念美術館で木村さん講演
川端龍子について講演する学芸員の木村拓也さん=鹿児島県奄美市笠利町
2023年度の田中一村記念美術館「美術講演会」が9日、鹿児島県奄美市笠利町の県奄美パーク奄美の郷・屋内イベント広場であった。東京都大田区立龍子記念館学芸員の木村拓也さん(42)が「川端龍子をご存知ですか~田中一村との意外な接点」と題して講演。大画面の「会場芸術」を提唱した日本画家・川端龍子(りゅうし)(1885~1966年)の画業を通し、奄美大島の自然に魅せられた孤高の画家・田中一村(1908~77年)との関わりについて紹介した。
木村さんは日本近現代美術を専門とし、約10年にわたり龍子を研究している。講演は▽龍子はどのような画家だったのか▽龍子が目指した芸術▽龍子と一村との出会い―の3章で構成。挿絵画家として名をはせた龍子が30歳で日本画家となり、日本美術院での活躍と脱退を経て、美術団体「青龍社」設立に至る経緯などを解説した。
また、青龍社が運営する「青龍展」に入選した一村の作品「白い花」(1947年)を取り上げ、出品一覧に龍子自筆の解説が添えられたこと、展示場所が龍子の隣だったことから「相当高い評価を得ていたことが推測される」と分析。
一方、同展での落選が一村の逆鱗(げきりん)に触れ、龍子と決別する原因となった作品「秋晴」(48年)について「太い線で被写体を大きく描くよう指導した龍子の表現からは外れ、細い線で余白の美が強調されている」と指摘。「龍子が若き一村に自分が追求すべき芸術の違いを突きつけたことで、一村は奄美という運命の地で独自の画境を開き、南の琳派と称される『田中一村』が誕生した」と述べた。
高校時代は美術部に所属し、市美展などでも入選歴があるという奄美市の才田菜美可さん(30)は「一村についての知識はあったが、龍子は名前だけ耳にした程度だったので、良い学びの機会となった。8月に東京に行く機会があるので、ぜひ龍子記念館にも足を運びたい」と話した。
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