能代銘菓「東雲羊羹」の熊谷長栄堂 今月末で閉店

今月末で閉店する熊谷長栄堂と鈴木代表(能代市向能代で)
素朴な味わいで親しまれる伝統の和菓子「東雲羊羹(ようかん)」を製造・販売する能代市向能代の「熊谷長栄堂」(鈴木博代表)が6月末で閉店し、江戸後期から続く186年の歴史に幕を下ろす。能代を代表する銘菓の老舗店の閉店に、全国各地の愛好者から「寂しい」「残念」といった惜しむ声が相次いでいる。
熊谷長栄堂は1837(天保8)年創業。江戸期に北前船が能代港に停泊した際、京都の和菓子職人から作り方を教わったという。創業時から製法を変えず、看板の東雲羊羹だけを作ってきた。
平成26年7月に7代目の熊谷健さんが亡くなり、営業を一時休止。「懐かしの味」を待ち望む多くの声に押され、弟の鈴木代表(88)が8代目を継ぎ、2歳下の鈴木保(まもる)さんと兄弟2人で力を合わせ、27年3月に営業再開。老朽化した設備を廃止し、あんを練る機械と包装の袋にようかんを流し込む充塡機を導入し、東雲羊羹を作り続けてきた。
しかし、昨年8月ごろから充塡機の故障が続き、修理に出してもうまく直らず、「だまし、だましやってきた」(鈴木代表)。さらに昨年12月には工場責任者の保さんが病気で亡くなり、営業の継続が困難な状況となった。後継者がいないほか、10人いる従業員と鈴木代表自身の高齢化も踏まえ、閉店を決めたという。
鈴木代表は「186年の歴史の重みがのしかかり、先祖に申し訳ない気持ち。店を続けてほしいという声も多く頂き、大変ありがたいが、断腸の思いで決断した」と話した。
東雲羊羹は小、中、大の3種類あり、価格は270円~1千円。昔から変わらず砂糖、小豆、寒天だけを材料にして作り、添加物は一切使用しない。全国菓子大博覧会の第1回大会金賞や名誉総裁賞などの受賞歴があり、第1回大会金賞のラベルと朝日がデザインされたレトロな包装も人気。能代のふるさと納税の返礼品に選ばれたり、囲碁の本因坊戦のおやつとしてプロ棋士に振る舞われたりするなど、能代を代表する銘菓として親しまれてきた。
近くに住む80代女性は「東雲羊羹はまろやかな甘みで、冷凍するとおいしさが増す。有名なお菓子で、大館市や秋田市の兄弟に定期的に送っている。続けてほしかった」と残念がった。同市二ツ井町の70代男性は「186年の歴史ある店の閉店はあまりにもったいない。事業を引き受けてくれる菓子店があればいいのだが」と話した。
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