水素充填車 公開 動物園にも配達 鹿追実証事業
鹿追町を拠点に行われている水素普及に向けた実証事業で、今年度導入する「簡易型水素充填(じゅうてん)車」が3日、町環境保全センターで公開された。9月から運用開始し、燃料電池(FC)フォークリフトや、おびひろ動物園に設置するFC向けに水素を配達する。
新たに導入した簡易型水素充填車(中央奥)と、FCフォークリフト(手前右)、水素自動車(同左)。奥が水素ステーション
事業は環境省の委託で、産業ガス大手エア・ウォーター(大阪)、鹿島建設(東京)など4社が2015年度から取り組んでいる。同センターのバイオガスプラントで発生する、家畜ふん尿由来のバイオガスから水素を精製。センター内のチョウザメ飼育施設やフォークリフト、水素自動車などの燃料として利用している。また、施設外の酪農家や、帯広競馬場内のとかちむらに設置したFCにも水素を供給した。
寒冷地でも安定供給できることは確認できたが、普及に向けては、より効率的な運搬方法や安全な貯蔵方法が課題。そこで、今年度からの2カ年で、新たな運搬・貯蔵方法について検証する。
簡易型水素充填車は、センター内の水素ステーションで充填した水素を、需要先のFCや貯蔵施設に直接供給できる。複数のボンベを束ねた「カードル」よりも効率的に運搬・充填できるメリットがある。9月以降、JA鹿追町とJA帯広かわにしにFCフォークリフトを配備し、充填車による供給を始める。
一方、貯蔵方法の実証では、水素を吸着する性質を持つ金属でできた「水素吸蔵合金タンク」とFCを、おびひろ動物園に設置する。同タンクは高圧のボンベと異なり常圧で、仮に損傷しても燃えないという。保安上の制約をクリアしやすいため、住宅地などでも導入できるのがメリットとなる。
同園に設置するFCは、100~200頭規模の酪農家での使用を想定し、出力30キロワットの物を導入する。同園の1日平均電力量を賄える程度で、多くの公共施設の非常用電源としても十分な容量という。今月末から設置作業を進め、11月から運転開始予定。
3日に両社の関係者が同センターで事業概要を説明。「簡易型水素充填車と水素吸蔵合金により、水素ステーションから離れた場所や、保安規制上のハードルが高かった場所での使用拡大につなげたい」としている。
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