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老舗酒店「〆二福士商店」 30日で閉店 街見詰め95年

1928年から続く苫小牧市錦町の酒店「〆二(しめに)福士商店」が30日で閉店する。3代目店主の福士徳彦さん(68)が酒販を取り巻く環境の変化や後継者の不在、自身の高齢化などを受けて決断した。街の発展と共に歩むこと95年間、福士さんは「みんなから『もったいない』と言われるけど、元気なうちにやめたい」と晴れやかな表情を見せている。

「祖父や父母からの積み重ねで続けられた。自分だけの店じゃない」と話す福士さん

 同店は福士さんの祖父徳之進さん(1899―1973年)が28年、苫小牧駅前で雑貨や食品を売る商店を開業したのが始まり。松前出身の徳之進さんが室蘭の雑貨店で修業し、苫小牧に移って店を始めたという。51年に繁華街の現在の錦町に移転し、飲食店の需要が見込める酒店に衣替え。翌52年に父辰雄さん(1928―2009年)が引き継ぎ、福士さんは「祖父は物静かで実直な人。父は戦後の荒波を生きてきただけに厳しく、おっかなかった」と懐かしむ。

 同店は「ふくしさん」「しめにさん」と地域に親しまれ、さらに95年に店を継いだ福士さんが「地酒」の販売に力を入れて名声を高めた。当初は周囲から「地酒なんて誰が飲むのか」と言われたこともあったが、福士さんは「現場に行けば造っている人の『顔』が分かるし、お客さんに伝えたい『物語』がある」と日本酒の魅力に引かれた。

 全国各地を回って酒蔵の社長や杜氏(とうじ)と縁をつなげ、「信頼関係ができないと卸してくれないところもあるが、一度卸せば信頼して売り方を任せてくれた」と振り返る。銘酒「久保田」で知られる朝日酒造(新潟県)に何度も通い、同社主催の勉強会「久保田塾」で研さんを重ね、同社の純米大吟醸「呼友」を道内で唯一販売できるようにもなった。

 中学校時代の同級生で日本料理店「よど川」(表町)の代表藤田恵二さん(68)らと結成した「地酒の会」で、日本酒について夜な夜な語り合った。藤田さんは「35年前は『吟醸酒』という言葉も浸透していなかった。お店で酒を頼んでも1種類しかない時代だった」と説明する。今では同店も「日本酒が豊富なお店」で知られるが、当時を「食事はメニューから選べるのだから、『酒も選べるように』と売り方や飲ませ方を議論し合った」と回顧する。

 一方、近年は新型コロナウイルス感染拡大で飲食店からの需要が減り、経営環境は厳しさを増すばかり。全国各地の酒店がインターネット販売やSNSを使った宣伝に力を入れる中、福士さんは「お金さえ払えばどこにでも売るという酒蔵も出てきた。信頼された酒店がお客さん一人一人と話し、地酒を薦める自分の時代とは違う」と時代の移り変わりを感じるようになった。

 さらに「(同店を)生きているうちはやってくれ」と話し続けていた母・良子さんを昨年6月に亡くし、後継者の不在や透析を欠かせない自身の体調も踏まえ、30日をもって閉店することを決めた。思い出が詰まった築70年超の店舗は閉店後解体する予定だが、お世話になった酒蔵や地酒の縁でできた友人の元を訪れる計画を立てており「『〆二福士商店』と地酒でできた縁で人生が豊かになったよ」と感謝している。

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