自筆献呈署名入りの「山羊の歌」（中原中也記念館提供）

　山口市出身の詩人、中原中也（１９０７～３７年）が文豪の谷崎潤一郎（１８８６～１９６５年）に宛てた自筆献呈署名入りの「山羊の歌」が見つかった。中也の生前に刊行された唯一の詩集で、谷崎に謹呈していたことを裏付ける貴重な資料。１６日から、湯田温泉１丁目の中原中也記念館で特別展示されている。２７日まで。

　「山羊の歌」の見返し部分に墨で「谷崎潤一郎様　中原中也」と書かれている。同館によると大阪府豊中市の吉田弘孝さん（９１）が６０年以上前に大阪市内の古書店で購入。長年大切に保管してきたが、高齢になったことや、多くの人に見てほしいとの思いから、同館の中原豊館長に相談し、寄贈した。

　「山羊の歌」は１９３４年に文圃堂（ぶんぽどう）書店から２００冊（うち市販は１５０冊）刊行された。

　奥付には通し番号が振られており、谷崎に贈られたのは１８番。これまでの研究で、哲学者の谷川徹三に１６番、仏文学者の中島健蔵に１９番、作家の志賀直哉に２０番が贈られていることから、番号と献呈先の関連も注目される。

　中原館長は「中也と谷崎にどんな交流があったかは不明だが、今回の発見により研究テーマが広がった。献呈本は多くの人に見てもらいたいが、大切に保管するのも資料館の役目。良い状態で後世に残したい」と話している。

　開館時間は午前９時～午後５時（入館は４時半）。毎週月曜日は休館。