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奄美博物館、修復に本腰 日本復帰68年  デジタル化で資料恒久保存へ 泉芳朗陳情書公開  

修復を終えてよみがえった陳情書。力強い墨字は泉芳朗の肉声が聞こえるよう=7日、鹿児島県奄美市名瀬の奄美博物館

 戦後、行政分離された鹿児島県奄美群島が1953(昭和28)年に日本復帰してから25日で68年となる。奄美市教育委員会文化財課は現在、奄美博物館に所蔵する復帰運動関連資料の修繕作業やデジタル化に取り組んでいる。時間の経過とともに当時を知る体験者が減少する中、同課は資料の恒久保存や歴史の継承につながると期待を寄せる。復帰運動の父、泉芳朗が米高官に宛てた直筆の陳情書は既に修復が完了、25日から同博物館2階展示室で一般公開する予定だ。

■復帰実現を切々訴え

 同館は408種約1500点にも及ぶ膨大な復帰関連資料を所蔵しており、すべて市文化財に指定されている。

 今回の事業は2023年12月の復帰70周年を見据えた取り組みで、20年度から22年度までの3カ年計画で進めている。初年度は泉の陳情書修復事業を行い、このほど公開が決まった。

 書簡は1953年7月9日付。米国民政府(沖縄設置)のチャールズ・ブラムリー主席民政官の視察来島に合わせて作成されたもので、奄美大島日本復帰協議会議長を務めていた泉の署名が記されている。

 当時の情勢を見ると、翌月の8月8日にダレス米国務長官が奄美群島の日本返還を発表する(いわゆるダレス声明)直前のタイミングだったとはいえ、力強い毛筆で島の窮状を切々と訴えている。

 陳情では「政治経済交通は勿論あらゆる面に断ち切られ今や正に二十余万住民の生活は精神的にも物質的にも許さない悲惨な状況」と指摘。その上で「日本領土を二分する不合理不自然な冷たい二十九度線の鉄鎖より奄美大島を開放し我々二十余万郡民が神かけて熱願してゐる祖国日本復帰が一日も早く実現する様に御配慮下さる事を伏して懇願陳情致し…(原文、略)」と求めている。

■劣化進む陳情書

 陳情書は縦19・3センチで、長さは186センチに及ぶ。米軍統治下の物資不足で紙質が悪かったこともあり、汚れや赤さびの付着、折り目部分の亀裂などの劣化が進んでいた。

 修復事業では沖縄の専門業者に依頼し、クリーニングやしみ処理、過去の応急処置で貼られたセロハンテープの接着剤除去などを実施。紙繊維の成分分析を行った上で、複製も作成された。

 高梨修館長によると、この業者は明治時代以降に作成された紙資料(和紙以外)の保存修復技術を持つ、九州・沖縄でも数少ない専門業者という。

■見直される保存の在り方

 同館には奄美研究のバイブル「南島雑話」写本をはじめ、数多くの所蔵品が存在する。このため修繕事業は年代の古い資料から優先される傾向があり、現代資料に位置付けられる復帰関連の修復作業はなかなか進まなかった。

 高梨館長は「恒久保存という博物館の使命を果たすためにも、今後はデジタルアーカイブ化が重要になる」と指摘する。契機は東日本大震災。「阪神・淡路大震災でも現地の博物館が壊滅的な被害を受けたが、東日本大震災は資料そのものが津波で流れてしまう未曽有の出来事が起きた。改めて資料保存の在り方が見直されるきっかけになった」と話す。

 さらに文化財課は事業最終年度となる2022年度、このデータを活用したデジタル教材化も視野に入れる。伊集院正課長は「日本復帰運動の歴史や伝承の強化が図られる」と郷土教育への利活用を期待。教育現場では、児童生徒1人1台ずつタブレット端末を配布する国のGIGAスクール構想も始まっている。

 21年度事業では、14歳以上の群島民の99・8%が署名したとされる復帰請願署名録(34冊)、沖永良部島と与論島の2島分離反対署名録(2冊)など、資料3種類のデジタルデータ化と複製を進めている。

 ◇

 奄美市教育委員会は「日本復帰記念の日」の25日、名瀬地区の奄美博物館、笠利地区の歴史民俗資料館と宇宿貝塚史跡公園の3施設を無料開放する。

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