「認知症マフ」普及を 長野県駒ケ根市で「おれんじマフの会」発足
自作の認知症マフを手にするメンバー。認知症マフの普及啓発に取り組む「おれんじマフ(認知症マフ)の会」が発足した=駒ケ根市内
英国で認知症高齢者をケアする目的で広まった筒状のニット小物「認知症マフ」。布製もあり素材の柔らかな手触りが認知症患者の気持ちを和らげるなどし、治療や介護を行う際の拘束など身体抑制を減らす効果が期待される。日本国内でも徐々に普及が進む中、長野県駒ケ根市で、認知症マフの普及啓発に取り組む団体「おれんじマフ(認知症マフ)の会」が発足した。
■手触りが刺激 色や柄も効果
ともに県看護大学(同市)広域看護学講座講師で、同会代表の小野塚元子さん、副代表の細田江美さんによると、認知症患者は記憶障がいなどの影響で強い不安を抱き、感情が不安定になるため、治療などの際に身体抑制が必要な場合がある。2人は「身体抑制はできるだけ避けたい」と現場の悩みを口にする。
2人は、認知症マフは「心地の良い手触りが『快』の刺激を与え、気持ちを落ち着かせる効果があるとされる」と話す。素材の色彩や絵柄、装飾が視覚に入り、意識を治療などからそらす作用、記憶を刺激する療法「回想法」の効果も期待できるとする。
同会では、市内の医療機関や在宅介護の現場で認知症マフを使ってもらったところ、点滴から意識がそれる、使用する拘束器具の数が減るなどの効果が見られたという。同会は、マフを医療・介護の現場で活用することで治療などが安全に実施でき、認知症当事者や医療従事者、介護者の負担軽減につながると考える。
会の活動では認知症マフの普及を目的に勉強会の開催、通いの場など地域での啓発・広報、病院や介護施設での使用のほか、県看護大などと連携しマフの効果に関する研究に協力する。マフは寄付された毛糸や布で作り、材料費などの経費には市社会福祉協議会の地域見守り支え合い事業の助成金を活用する。
■個人や団体の参加呼び掛け
市内で6月に開いた同会の会合には、認知症当事者の家族や認知症ケアに携わる医療介護従事者、衣料作製などを行う団体、手芸が好きな住民などが参加。看護師や介護者がマフの活用事例や効果を説明し、改良点など意見を出し合った。同会立ち上げメンバーの安部宏美さん=市地域包括支援センター認知症地域支援推進員=は「認知症マフを作る、使う、広める個人・団体をつなぎたい」と話していた。
同会は活動に関心がある個人・団体の協力を呼び掛けている。市ボランティア連絡協議会の登録団体。不用な毛糸や布の寄付、同会に関する問い合わせは市社協(電話0265・81・5900)、市地域包括支援センター(同81・6695)へ。
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【認知症マフ】 毛糸や布で作る長方形で筒状の小物。左右から内側に手を入れるなどして使う。表面や内側に人形や毛糸玉などを取り付けた物もあり、それら付属物を握って感触を楽しむ使い方もある。英国では救急車に装備し、認知症患者の搬送時に使用する例もある。
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