まちづくりへの思いを語る西町ガレージの小嶋郁哉代表（手前）。後ろが「さかさま不動産」を展開するOn-Coの水谷岳史代表

　借り手の夢や思いを発信して、空き物件の発掘や流通につなげるウェブサイト「さかさま不動産」を展開するOn-Co（三重県桑名市）は、長野県伊那市西町の交流拠点「西町ガレージ」に長野支局伊那営業所を開局した。県内は辰野町に続き２拠点目。９日、同市創造館でオープニングイベントがあり、営業所の運営を担う西町ガレージの小嶋郁哉代表（30）は「地元の大家さんと空き物件で挑戦したい人が思いを共有できる空間をつくりたい」と語った。

　さかさま不動産は、物件情報が並ぶ従来の不動産システムとは”逆”で、借りたい人のインタビュー記事が並ぶ。「大家さんが出会いたい人、応援したい人を選べるサービス」で、流通していない空き家を発掘し、利活用を促進する。県内初の辰野営業所は２０２２年７月、辰野町と民間事業者が協力して開局した。

　小嶋代表は伊那市出身で、名古屋市からＵターンし、内装資材の新古品販売と施工、ＤＩＹ相談窓口やパブを併設した西町ガレージを21年７月に創業。非公開の物件に出合い、持ち主と折衝して開設した経験や、新しい感性で起業に挑戦する若者が増えている状況を踏まえ、物件を活用する動きを加速しようとさかさま不動産の導入を決意した。

　イベントには、物件を借りたい人やまちづくりに興味がある人など約30人が参加。経過説明の後、On-Coの水谷岳史代表（36）がさかさま不動産の仕組みを解説し、空き物件を探す人の提案発表やワークショップなどを繰り広げた。西町ガレージに会場を移し、まちづくりへの思いを語り合う交流会も行った。

　小嶋代表は貸し手や借り手の相談に応じ、橋渡し役を務める。仲介は不動産業者に依頼するという。水谷代表は「借りたい人と大家さんがコミュニケーションを取れる関係性をつくり、挑戦を応援できる地域になっていけば」と期待を寄せた。

　伊那市空家等対策計画によると、21年度末の市内の空き家は１１６５戸。うち８９９戸（77.2％）が利活用可能な空き家という。