LCC庄内―成田便再開の道筋は 外国人観光客の需要増がカギ
コロナ禍の渦に巻き込まれるように姿を消したのがLCC(格安航空会社)ジェットスター・ジャパンの庄内―成田便(1日1往復)だった。2019年8月の就航以来、実質わずか1年3カ月余りで運航中止となった。再開へ道筋はあるのか。県は積極姿勢であることなど現状を追った。
県庁のホームページに興味深い問答が載った。今月17日更新の「県民の生の声コーナー」に「ジェットスター再開について」の質問があった。結婚を機に千葉から山形に移住した人が「撤退となった時は本当に残念でした。ぜひ早急に再開させてほしい」と意見を寄せた。これに「県の取り組み状況」と題して「県と地元自治体、関係者が一体となって誘致に取り組み、就航に至りましたが、新型コロナの感染拡大の影響で運休になっています」とし、県・地元市町などで構成する庄内空港利用振興協議会は積極的に航空便を利用するよう取り組み、また「ジェットスター社に運航再開を働き掛けるなど、最善の努力を尽くしてまいりたいと考えています」と実に前向きなのだ。対応した「みらい企画創造部・総合交通政策課」に改めて本気度を尋ねると「具体的な話はまだない。まずは地元でどれだけ盛り上がれるかだと思います」と応じたが、ポジティブな姿勢の背景には吉村美栄子県知事の思い入れなども見える。
運休の過程はまさしくコロナ直撃だった。例えば20年5月の成田空港利用者数は前年同期比98%減とほぼ休業状態。一方で新規就航前、知事は庄内振興を掲げ、ジェットスターと直交渉した。「こぎつけるのは大変だった。でもね、民間企業は撤退するときはあっという間ですよ」と地域懇談会があれば、各自治体に路線維持のための団体客の利用を促し、県庄内総合支庁にハッパをかけ続けた。知事は初就航では自ら乗り込んだくらいだ。
コロナが第5類(インフルエンザ等と同等)に変更され、首都圏はマスクなしの外国人観光客であふれている。訪日観光客(インバウンド)に関して政府は2025年目標として、1人当たり20万円消費、年間需要5兆円を掲げたが、今年度中の達成さえ見込める状況という。この流れに乗って外国人観光客の確実な需要を呼び込めるかなども運航再開のカギになりそうだ。
全日空の庄内―羽田便は今年12年ぶりに1日5便の期間を設け、都心へのアクセスの良さをアピールする。一方片道4490円(新就航時)と安さが魅力のLCCは都内東部・千葉・茨城などからは“生活路線”でもあった。ジェットスター社は本紙の問いに「現時点では運航再開の計画はない」と応じた。コロナは国によっては勢いを保つなど国際的に絶滅したわけではない。その見極めなども、運航再開の道程に関係しそうだ。(東京支局・富樫 嘉美)
◆LCC成田発着 ジェットスターは成田―宮古(下地島)を運休していたが3月下旬再開。ピーチ・アビエーションは21年10月鹿児島、昨年10月宮崎、今年3月釧路、女満別、長崎の各線を運休。スプリング・ジャパンは佐賀便を6月末で運休させる。国内線運休は振るわない路線の整理とともに利益幅の大きい国際線への乗り換え戦略もある。
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○…成田空港は今月20日、開港45周年を迎えた。庄内―成田便就航時は発着する第3ターミナルの周辺工事が未完成でバスの乗り入れができず、第2ターミナルから300㍍以上も歩くしかなかったが今春工事が完成。3月からは都心直行のバスの乗り換えなど第3ターミナル直着けとなり、格段に便利になった。

2019年6月、吉村知事は就航前に庄内―成田便利用を働き掛けた
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