酒田中心市街地の象徴 71年に及ぶ歴史に幕 (マリーン5清水屋) 閉店に市民ら詰め掛け涙の別れ
酒田市中町二丁目の老舗デパート「マリーン5清水屋」が15日、前身の清水屋デパートから71年に及んだその歴史に幕を下ろした。中心市街地の象徴・ランドマークとしてそびえ、市民に親しまれてきた清水屋。午後6時の閉店時には大勢の市民らが1階エントランスホールに詰め掛け、「ありがとう」「さようなら」という歓声が響き渡り、中には涙ぐむ人の姿も見られた。

清水屋の最後を見届けるため午後6時の閉店時には大勢の市民らが詰め掛けた=15日午後6時10分ごろ
清水屋は、1925(大正14)年創業の衣料品店が起こりで、50(昭和25)年に清水屋デパートとして開店。市中心部が焦土と化した酒田大火(1976年)から2年後の78(同53)年、中町二丁目に大火復興事業で完成した酒田セントラルビル(マリーン5)のキーテナントとして入居した。
94(平成6)年、東北地方で百貨店事業を展開していた中合(福島市)と合併し中合清水屋店となったが、中合は2012(同24)年2月に営業を終了。同社と事業部分譲渡契約を結んだマリーン5清水屋は同年3月にリニューアルオープン、酒田セントラルビル社長だった故成澤五一氏(今年5月23日に死去)が社長に就任した。
社長就任に当たって成澤氏は「百貨店の原点に立ち返り、百貨店の原理を追求することにより『新しい百貨店』を構築したい」と述べるなど意欲的に店舗運営を進めてきたが、郊外型ショッピングモールとの競合が激化して業績不振に陥り、さらに小売業界を取り巻く環境が年々厳しさを増し、損失を計上するなど近年は赤字体質が続いた。
昨年来の新型コロナウイルス感染症が追い打ちをかけた形となり、成澤氏の死去後は取締役会を数回開き、新たな経営体制と今後の経営の在り方を検討。負債を抱えている上、資金繰りなどで先行きが見通せないことから、経営再建を断念した。帝国データバンク山形支店によると、負債は9億5000万円に上り今後、自己破産を申請するという。
営業最終日の15日は午前10時半の開店と同時に、別れを惜しむかのように大勢の市民らが訪れ、店内を回って従業員と会話しながら品定め。店外では「記念に」と写真に収める姿も多く見られた。午後6時の閉店時には従業員が正面玄関前に立ち並んで見送り。セレモニーなどはなく、最後の買い物客が店外に出ると、静かに扉が閉められた。同7時すぎにエントランスホール内にパーテーションが立てられ、さらに営業終了を知らせる張り紙が店頭に掲示された。
常に中心市街地の中核を担ってきた清水屋の閉店に、店外で写真を撮っていた女性客は「長年にわたってお世話になった。なくなるのは本当に寂しい」と。最後の買い物を終えた女性客も「生まれた時から常に清水屋がそばにあった。なくなったという実感がまだ湧いてこない。市街地の活気がさらに失われるようだ」と話した。

最後の営業を終え、深々と頭を下げる従業員たち=15日午後6時20分ごろ
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