祖父が残した演習日誌 長野県飯島町の星野さん宅

祖父の甚次郎さんが残した演習日誌に目を通す星野光希さん(左)と調査した伊藤修さん
飯島町上ノ原の農業星野光希さん(80)宅で、明治期に群馬県高崎市を拠点とした陸軍第15連隊に入隊した祖父の甚次郎さんが、当時の演習日誌を残していたことが分かった。同町山久の郷土史家伊藤修さん(71)が調査。機密的な内容が日誌に記されている関東一円で行った演習は、当時の新聞や文献にも記録はなく、伊藤さんは「身分ある軍人ではなく一兵卒だった甚次郎さんがなぜこの日誌を手にできたのか。若者が命を捧げた太平洋戦争とは違った軍隊の環境が明治期にあったことがうかがえる」と説明する。
日誌は1897(明治30)年11月1日から18日間の演習記録で、群馬、埼玉、東京を転じて演習を展開した連隊の命令系統や軍事演習の内容、宿営地などが詳細に15連隊の用箋65枚に書かれている。
甚次郎さんはこの日誌が書かれたおよそ1年前に20歳で連隊に入隊しており、伊藤さんは「若い新兵が、このような演習の行動記録を知るわけがない」と指摘。その上で、連隊がまとめた日誌をその後に、甚次郎さんが書き写したのではないかと推測し、こう続けた。
「太平洋戦争は徴兵された若者が国のために命をささげるのが軍隊だったが、甚次郎さんが日誌を残すことができた経過を考えると、明治期には若者が軍隊を通じて探求心を持ち、社会を考えられる環境にあったとも読み取れる」。
甚次郎さんはほかにも、日露戦争に出征した戦地で日々自身の様子を書き留めたメモ帳「征露日誌」なども残し、筆まめだった。
昨年から調査してきた伊藤さんは、演習経路の図書館や研究者らにも当たった。「戦後軍事的な資料は焼却され、個人的に残されたものも世代が変わり消えようとしている。しかし、まだ今であれば、星野さんが残したような資料が見つかるかもしれない」と話す。
光希さんには49歳で早世した祖父との思い出はないが、「もともと星野家は旅籠で、いろいろな人と交流がある中で、祖父は読み書きなども覚えたりしたんだと思う。達筆でいろいろとよく書き残したと感じる。このように日の目を見て本人も喜ぶだろう」と目を細めた。
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