寒に入り十勝管内も一年で最も気温の低い時期を迎えているが、新得町や音更町のビニールハウスの中ではマンゴーやバナナといった南国を代表する果樹が実を付けている。熱源は温泉熱やバイオガスプラントの余剰熱など地域資源。北国のハンデを逆手に取った発想で付加価値を高めている。
◆温泉で夏冬逆転マンゴー収穫 音更のノラワークスジャパン
収穫が最終盤を迎えているマンゴー。今年は天候に恵まれ、例年以上の大きさに育った
真冬に実がなるマンゴー「白銀の太陽」の収穫が、音更町内の農場で最終盤を迎えている。今季は実を付けてからの日照に恵まれたこともあり、甘く大きな実となった。
ノラワークスジャパン(音更町、中川裕之代表)がハウスで栽培。夏は雪氷を利用して温度を下げ、冬は温泉熱などを利用し、ハウスを36度ほどに保つ。季節を逆にして栽培することで、全国で他にない冬に収穫できるマンゴーが育つ。
白銀の太陽ブランドのマンゴーの糖度は15度以上。10月ごろから実を結び、11月末に収穫を開始。クリスマス時期がピークで、終盤を迎えた現在は1日30個ほどを採取している。今冬の収穫量は1000個ほど。1個当たり平均350グラムほどで、東京都内を中心に販売。1個3万5000円で売られるものもある。
ノラワークスジャパンの荻原侑香マネージャーは「10~12月の天候が良く、例年よりも実が大きい」と話している。同社ホームページからも注文ができる。
◆バイオガスで初のバナナ挑戦実る 新得の友夢牧場
屋外は氷点下だがハウス内は夏のような温度。温室でたわわに実ったバナナ
新得町上佐幌の友夢(ゆうむ)牧場(植田昌仁社長)では昨年、牧場内のビニールハウスでバナナが初めて実を付けた。約300平方メートル、3重に囲ったハウス内は18度以上に設定され、木が大きな葉を広げている。「アイスクリームバナナ」など4品種10本を植えたうち、初年は3品種の4本に花が咲き、実がなった。
育成牛を含めると乳牛約1600頭を飼育する同牧場では、ふん尿の処理にバイオガスプラントを導入。処理過程で出る温水を活用してハウスを暖めている。バナナ栽培は、既に取り組む水耕のメロンに続く試みだ。
木の成長や実の熟し方など、「1年目でまだ分からないことも多い」と同牧場の湯浅佳春会長(71)。一般向けに販売する予定はないが、味は良くて加工向けの用途などに期待は膨らむ。湯浅会長は「牧場の牛乳と合わせたジュースやアイスクリームの原料などに使えるかもしれない」と話している。
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