尖石遺跡出土の縄文土器里帰り 所蔵者が長野県茅野市の考古館に寄託

尖石遺跡から出土して78年が経過し、尖石縄文考古館に里帰りした土器と寄託した高橋政幸さん
茅野市教育委員会は17日、同市豊平の尖石遺跡で1942(昭和17)年に出土した縄文時代中期後半の土器が所蔵者から同市尖石縄文考古館に寄託されたと発表した。市内出身の考古学研究者宮坂英弌(ふさかず)氏らが発掘した直後から東京帝室博物館(現東京国立博物館)に長年保管されていたが、今年11月に所蔵者に返却されていた。考古館は「縄文集落の構造研究を裏付ける貴重な遺物」と評価。近く展示し、多くの人に見てもらう考えだ。
土器は高天酒造社長の高橋政幸さん(71)=岡谷市=の所蔵。考古館などによると、出土後、宮坂氏の旧制諏訪中学(現諏訪清陵高校)の同級生で高橋さんの祖父である巳喜之助(みきのすけ)氏の家の応接間に飾ってあった。43年に東京帝室博物館の依頼で搬入されたが展示されず、奈良帝室博物館(現奈良国立博物館)に移送。搬送後に接合部が破損したため、44年に東京帝室博物館に戻されたという。
2019年5月、東京国立博物館から「尖石遺跡出土と伝わる土器が収蔵庫にある。どんな史料なのか」と考古館に問い合わせがあった。当時の新聞記事を添付して送ると、博物館から「破損部を修理して所蔵者に返却することが決まった」と返事があり、返却された。高橋さんは今年11月26日、「土器の古里である八ケ岳山麓の地こそふさわしい」と寄託した。
土器はアルファベットのXの形の取っ手が4カ所付いた「X字状把手(とって)付深鉢」で、高さ53.5センチ、口径46.3センチと大型。考古館の守矢昌文館長は、竪穴住居からではなく住居群の間から出土したと説明。並んだ石や大きな穴も見つかっており、出土範囲は集落の共同の広場だった-とする宮坂氏の推論を紹介し、「広場を持つムラがあったことを調査を通して裏付けた史料」と話した。
調査では1942年9月23日に土器の一部が見え、翌24日に掘り出したとの記録が残っている。同年9月23日は尖石遺跡の国史跡指定が決まった日という。巳喜之助氏は南信日日新聞(現長野日報)の役員も務めた人物。調査を物心両面で支えていた。
山田利幸教育長は「子どもたちへの大きなプレゼント。市の大切な宝物として学習や研究に生かしたい」と寄託に感謝した。高橋さんは「土器には縄文人の魂が宿っている気がする。古里に戻って来て良かった。宮坂先生もほっとしているのではないか」と推し量った。
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