マリモ、胞子形成し繁殖を確認【阿寒湖】
阿寒湖のマリモ集団と遊走子を形成したマリモ藻体(若菜氏提供)
釧路国際ウェットランドセンター阿寒湖沼群・マリモ研究室長の若菜勇氏や北大による研究グループが、国の特別天然記念物マリモが胞子を形成して繁殖することを初めて確認した。胞子の形成率は極めて低く、逆にこのことが球状マリモの大型化に寄与していると考えられていることも分かり、海外の専門誌(電子版)に掲載された。今後のマリモ保全にも役立つ結果となり、若菜氏らはさらに研究を継続するとしている。 今回の研究論文の著者は若菜氏のほか、北大大学院地球環境科学研究院の梅川健人氏と大原雅氏教授。水性植物学の国際専門誌(アクアティック・ボタニー)のオンライン版でこのほど公開された。論文名は「阿寒湖における淡水緑藻マリモの繁殖生態と集合形態維持への役割」。
今回の研究は2017年からの2年間、球状となる集合型、岩石などに付着する着生型、綿くず状となる浮遊型が見られる湖の計5カ所で、春から秋にかけて年6回、1カ所当たり6サンプル、1サンプル当たり50本の藻体を単離し、胞子(遊走子)形成の有無を検鏡した。
この結果、8月中旬から9月上旬にかけ、チュウルイ湾やシュリコマベツ湾などでの集合・着生型のマリモで胞子の形成が確認され、しかも最大で1・3%と形成率が極めて低いことが分かった。球状マリモはこれまで、生殖を伴わず成長する栄養成長で維持されると考えられていたため、胞子の形成、放出が集団の維持や分布の拡大にも寄与していることが示されたほか、形成率が低いことによって栄養成長が可能となり、大型の球状マリモが育つことにつながっていることも判明した。
球状マリモが主に栄養成長によって集団を維持している実態が確認されたことで、遺伝子が異なることにより、集合型の集団を着生型の集団と代替することができないため「現存する球状マリモを残すことが保護・保全の大前提になる」(若菜氏)という。
若菜氏は「生殖生態が球状現象につながることが解明され、これまではっきりしていなかったものの一つが明らかになった」とし、さらに遺伝的に特化していることが分かれば、阿寒湖のマリモの特異性、湖の多様性がさらに示されることになり、湖単位での保護活動を考えていく必要がある」と話している。 現地調査などで尽力した梅川さんは「多い時は1日10時間以上検鏡するなど研究の大半は地道な作業の繰り返しだった」と振り返り、「多くの支えのおかげで 粘り強く頑張れた」と周囲に感謝。「今回の論文が マリモの研究発展や保全につながれば」と期待している。
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