坂井活広さん長野県駒ケ根市に法律事務所開業 漫才でも活躍

駒ケ根市内に弁護士事務所を開業した坂井さん
飯島町出身の弁護士で、漫才コンビ「さかいやすい法律事務所」のツッコミ担当としても活動する坂井活広さん(37)が、駒ケ根市内に法律事務所を開業した。「敷居の低い弁護士」を目指して愛着のある地元に深く根差す傍ら、見る人に前向きな気持ちを届けるためにネタの披露も続ける。
■校則が弁護士を志すきっかけ
JR駒ケ根駅前に広がる広小路商店街。駅から西に向かって200メートルほど歩くと、坂井さんの事務所が入る5階建てのビルに着く。4階の事務所の扉を開けると、小ぎれいなスーツに身を包んだ本人が現れた。「坂井と申します」。柔和な笑顔が印象的だ。
坂井さんは赤穂高校(駒ケ根市)の卒業生。在籍していた20年前には気になる風習があった。それは頭髪検査。校則で髪を染めてはいけないとされ、登校する生徒の髪の毛を教員が日頃から確認していたのだ。
ただ髪の色が人柄を決定づけるわけでもない。「人を見た目で判断しなくていいじゃないか」。疑問を抱いた坂井さんは校則を改めようと、生徒会の副会長になった。結局、改正は実現できなかったものの、自身の訴えが通じて頭髪検査の廃止が決まった。
「声を上げれば変わるんだ」。おかしいと思ったことに対しては正々堂々と主張を述べる-。この経験が、後に弁護士を志すきっかけの一つとなった。
■職務の傍ら再びお笑いの舞台に
高校卒業後、プロの芸人を目指して吉本興業の養成所の門をたたいた。だが、そこで目にしたのは厳しい競争の世界。才能豊かな人材がひしめく中で挫折のやむなきに至り、夢を諦めた。
心機一転して法政大学に入学し、弁護士になるため勉強に励んだ。「勉強以外の思い出がない」。苦笑しながらそう述懐する。学習院大学法科大学院を経て、3度目の司法試験で合格した。試験に向けた勉強を始めてから8年。気付けば31歳になっていた。
2015年、名古屋市内の法律事務所に入所し、弁護士としての職務に取り組み始めた。漫才コンビの結成はその1年後。同志社大学在学中にお笑いサークルに所属していた安井一大さん(35)とコンビを組んで愛知県弁護士会のイベントで漫才をしてはどうか、と先輩弁護士に勧められたことがきっかけだった。
一度はお笑いの舞台を去っていた坂井さん。気が乗らなかったが、法曹界に関するネタでいざ漫才を披露すると「めちゃくちゃ受けた」。笑いを取る快感を思い出し、コンビの活動が本格的に始まった。19年には若手漫才師の頂点を決める「M-1グランプリ」で1回戦を突破。アマチュアで2回戦に進出するのは全体のわずか8%に過ぎないという中で実績を残した。「司法試験より難しかった」と笑う。
■感謝しかない 地元で働きたい
実は、坂井さんには高校中退の経験がある。飯島町飯島中学校を卒業後、当初は飯田市内の高校に進学した。だがクラスになじめず、入学からほどなくして仲間外れにされるようになった。そんな時になにかと励ましてくれて心の支えとなったのが、中学時代の友人たちだった。「すごくつらい時期だったが、誤った道に進まずにすんだ」。友人に誘われて「やり直し」を決め、新しく入学したのが赤穂高校。仲間に恵まれ、「3年間、充実した時間を過ごせた」と振り返る。上伊那地域にUターンしたのも「感謝しかない地元で働きたい」とずっと思っていたからだ。
11日にオープンした事務所の名称は「ミライズ」。「依頼者が未来図を描けるお手伝いをしたい」との願いを込めた。高齢化が進む地域に密着し、遺産相続や遺言に関わる案件に力を発揮したい考えだ。また、親族に障がいを持つ人がいることもあり、「障がい者差別をなくしていきたい」と語る。
漫才コンビの活動も続けている。来年2月には福井市の刑務所で慰問公演をする予定だ。多くの挫折を味わった坂井さんが伝えたいメッセージは「人生は、やり直せる」。更生を目指す人たちを勇気づけることを誓い、準備を重ねている。
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