JR東日本 突風探知し列車運転規制
酒田市黒森の丘上に設置されたドップラーレーダー。地上から高さ約30メートルの鉄塔に載っている
JR東日本(本社・東京都)は5日、突風探知のため昨年11月に酒田市黒森に設置した高性能なドップラーレーダーの実用化のめどが立ったとして、今月19日午前10時から列車運転規制への運用を開始すると発表した。同社によると、ドップラーレーダーで突風を探知し列車の運転を規制するシステムの運用は世界初という。
庄内地方では2005年12月、庄内町榎木のJR羽越本線で特急いなほ14号が突風にあおられて脱線・転覆し、乗客5人が死亡、乗客・乗員33人が重軽傷を負う事故が発生した。同社は対策として07年1月、同町の余目駅にドップラーレーダーを設置し、気象庁気象研究所と共同で突風を探知する手法の研究開発に乗り出した。昨年11月には黒森に、観測範囲が従来の約2倍の半径約60キロで、精度も高いドップラーレーダーを移設し、実用化を目指し研究してきた。
ドップラーレーダーは、上空に音波を発し、水蒸気などに反射して返ってくる音波を分析し、風を観測するもの。気象研究所では、近づく風と遠ざかる風のペアを「風の渦」として検出する手法で、▽突風(藤田スケールで毎秒33―49メートルのF1以上)をもたらす可能性のある渦を探知▽この渦を追跡し、渦の強さと移動速度を算出▽渦がもたらす最大風速と予測進路を算出―という要素による情報処理手順(アルゴリズム)の開発を進め、確立した。
19日からは、もし突風をもたらす渦が観測され、予測進路に線路があった場合、JRの指令室の端末に表示される。指令員は表示を見て、運転士に列車無線で運転中止を指示する。
運転規制を実施する区域は、黒森のレーダーの半径30キロ以内で、羽越本線は「五十川(鶴岡市)―女鹿(遊佐町)間」、陸羽西線は「余目―清川(庄内町)間」。ドップラーレーダーを使った運転規制は今後、毎年11月―翌年3月に行う。
これまで突風による運転規制は、気象庁のレーダーで観測した雨の強さなど気象情報から突風の発生を予測する間接的な方法だったが、新方式は突風を直接観測するため、精度が高まり、より安全性の向上につながるという。
JR東日本広報部では「精度が高まるため、規制の頻度はこれまでよりやや増える可能性がある。今後は対象区域や期間を拡大して改善を図りながら、一層安全なものにしていきたい」、気象研究所では「冬季日本海側の突風だけでなく、さまざまな地域や季節の竜巻に広く適用できる、汎用(はんよう)性の高いアルゴリズムへの機能拡大を目指す」としている。
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