38年間の植物研究

瀧崎さんが「~東三河~野の花たちの歳時記」出版
豊橋市立東部中学校教諭、瀧崎吉伸さん(61)が、38年余にわたる植物研究の成果を分かりやすくまとめた「~東三河~野の花たちの歳時記(ダイアリー)」を出版した。 当地の草花がカラー写真で収録されている。子どもたちに自然に興味を持ってもらおうと、勤務先の学校の廊下などで掲示してきたものをまとめた。季節感の喪失が言われて久しい。「足元の小さな花や虫が、移り行く季節をささやかに訴えています」。瀧崎さんが子どもたちに語り続け、巻頭に収録した言葉である。 豊橋生まれ。父が大学で植物学を研究し、家には2000点の植物標本があった。だが、父は瀧崎さんが高校1年生の時に亡くなり、志を継ごうと、その道に入った。愛知教育大では生物学を学び、1982年に市立高師台中に赴任。以来、市内の各中学で教壇に立つ傍ら、葦毛湿原の保護活動、県環境審議会専門調査員などを続けてきた。 瀧崎さんの業績でよく知られるのが、外来植物の発見と同定だ。海外のそれが人の移動によっていつの間にか入り込み、繁殖し、日本の固有種を脅かす。1990年代まで、県内でそれを専門に研究する人はいなかった。2010年に名古屋市で開催された「生物多様性条約第10回締約国会議」(COP10)を前に、調査を依頼された。

豊橋市でのイネ科植物種「スパルティナ属」の発見(11年)と「ヒガタアシ」という和名の命名は瀧崎さんによる。08年に愛教大に問い合わせがあり、瀧崎さんが調査していたという。「干潟悪し、なんですよね」と瀧崎さん。ほとんどの人は見過ごす存在だが、実は魚の餌のゴカイを取る人たちの間では、その生息を脅かす存在として知られていた。同定し、和名をつけた植物は20種に及んでいる。 今でも週末などには、絶滅危惧種の観察などのついでに、新しい外来植物が繁殖していないかを見て回る。全国各地を調査し、屋久島にも足を運んだ。「変なやつ」を見つけたら、海外の植物データベースを調べて、研究する。地味な作業だが「新発見をして、誰も知らないことを自分だけが知っている、というのはとても興奮する」と瀧崎さんは笑う。 標本は3万5000点を超えた。県立自然史博物館が愛知には無いことを憂いていたが今春、豊橋市自然史博物館に外来植物を専攻した学芸員が入った。コレクションの整理、保管を進めているという。 瀧崎さんの「野の花たちの歳時記」は、四季折々の写真と、その草花にまつわるエピソードをやさしい文体で記している。

学校へ寄贈
市立小中学校全74校と私立桜丘中学校、くすのき特別支援学校、豊橋高校、家政高等専修学校に贈られる。 10日に市役所を訪れた瀧崎さんは「これまでの活動をまとめることができた。子どもたちが自然の生き物に興味を持ってもらうきっかけになれば」と語った。 山西正泰教育長は「植物好きな子どもたちが、わくわくするような内容です。写真なども見て活用してもらえるようにしたい」と話した。
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