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紀伊民報社

大逆事件の大石 命日に名誉市民称号授与

大石誠之助の墓を訪れ、名誉市民称号の授与を報告する田岡実千年市長や遺族の立花利根さん(右)ら=24日、新宮市で

 和歌山県新宮市は24日、明治末期の大逆事件で刑死した同市出身の医師・大石誠之助(1867~1911)への名誉市民称号の授与式を開いた。式は大石の命日に合わせて開き、処刑された時間に皆で黙とう。大石の遺族に表彰状を手渡した田岡実千年市長は「功績を広く内外に発信し、より一層の顕彰に努めたい」と誓った。

 授与式は市役所6階の議場で開催。午後2時23分に皆で黙とうをした後、田岡市長が大石のおいで、すでに名誉市民となっている西村伊作(1884~1963)の孫・立花利根さん(81)=千葉県市川市=に表彰状を手渡し「明治政府による思想弾圧、いわゆる大逆事件で時代の犠牲となり、非業の死を遂げられたが、現在においても熊野独特の進取の精神や反骨の気風の中、平和、博愛、自由、人権を唱えた先覚者としての功績は大きい」などとあいさつ。屋敷満雄市議会議長も「志は現在熊野・新宮に生きるわれわれが受け継ぎ、子々孫々へと伝え続けなければならない」と述べた。  式終了後には、関係者で市内にある大石の墓に参り、名誉市民称号の授与を報告した。  立花さんは「いつかこういう日が来るのではないかと思っていたが、皆さまのご努力でできたこと。『誠之助さん、よかったですね』と墓に語り掛けた」と話した。  この日は、大石をモデルにした小説を著した印南町出身の芥川賞作家・辻原登さん(72)=横浜市=も式に参列。「正の遺産ばかりでなく、押しつぶされていった人の考えや生き方そのものを名誉市民として顕彰することは、日本だけでなく世界でもまずない。偉大な決断」と高く評価した。  「『大逆事件』の犠牲者を顕彰する会」の二河通夫会長(87)=新宮市=は「英断に深く感動した。歴史の一こまが動いた感を強くし、ただ感無量。志を次の世代につなげていくよう努力していきたい」とコメントした。

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