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疫病から村人を守り殉職

田原で若い江崎巡査夫婦の追悼慰霊祭

 自らの身を犠牲にしてコレラ=ことば=から村人を守った江崎邦助巡査(享年25)と妻じうさん(享年19)をしのぶ135回忌追悼慰霊祭が邦助巡査の命日の23日、営まれた。関係者は殉職地の加治町と夫妻が眠る蔵王霊園内の墓所を訪れ、石碑に手を合わせた。  慰霊祭には田原署の山岡浩署長や田原警友会の神谷秀人会長、同署駐在所連絡協議会伊良湖地区協議会委員の長屋美久さん、澤井重利さんと署員計8人が参列した。  毎年、約20~30人が参列するが、今年は新型コロナウイルスの感染防止のため少人数で実施した。また5年に1回、同市加治町の浄光寺で営まれる法要は中止された。  江崎巡査は1861年三重県答志郡鳥羽村で生まれた。1886年妻のじうさんと結婚。当時の豊橋警察署田原分署に着任した。この年、大阪で発生したコレラが蔓延。愛知県内でも愛知、知多、渥美の3郡に被害が集中して862人が亡くなった。新婚当時の江崎巡査が担当していた堀切村(堀切町)でも同年6月感染者が確認された。  当時の警察官は保健所業務も職務の一つとなっていたため、江崎巡査は村の消毒業務に従事した。ところが「伝染病にかかると毒殺される」など根拠の無いうわさが広がり、村人から消毒を拒否されたり、竹槍まで持ち出して巡査に退去を迫るなど激しい抵抗を受けた。  江崎巡査は、3日間にわたって村人たちを説得。ようやく消毒作業を実施できたが、消毒任務の中で江崎巡査は自らもコレラに感染してしまった。  「このまま自分が市街地に入ると住民が感染する」と考えた江崎巡査は、現在の加治町稲場の林の中の小屋にこもって療養に努めた。新妻のじうさんは27時間にわたって不眠不休で介護をしたが、江崎巡査はついに23日に死去。夫を看病して同じ小屋で暮らしたじうさんも感染して、夫を追うように26日に死去した。

 夫妻をしのぶ慰霊祭は「民衆の保護と公共福祉のために清れつに散った2人の遺徳をしのぶ」ため毎年行われている。  慰霊祭で山岡署長は「恐ろしいコレラの中で勇気と誠実で戦った江崎巡査の生きざまは警察官として学ぶべきことが多い。大先輩の功績を後世に伝えて、田原市民の安心安全を守っていきたい」と述べた。

1886年のコレラ

コレラは1822(文政5)年の国内初上陸以降、断続的に流行を繰り返していた。開国後の79(明治12)年に初めて死者が10万人を突破。86(明治19)年は、2月に徳島県でまん延が始まった。一度は小康状態になったが5月になると大阪を中心に全国的に爆発的大流行になる。同月の死者は3614人だった。6月の死者は6575人、7月は1万4624人。ピークの8月は3万7650人が、9月は3万1552人が死亡した。年間15万5923人が発症し10万8405人が死亡、致死率は70%に達した。愛知県内では1143人が発症、862人が死亡した。

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