「嚥下食」今後の課題探る
病気や加齢によって起こる嚥下(えんげ)障害を抱える人が外食できる施設を増やしていこうと、庄内の地物を使った嚥下食の試食会が19日、鶴岡市の湯野浜温泉保養所うしお荘で行われた。うしお荘の延味克士支配人兼料理長と市立加茂水族館の魚匠ダイニング沖海月(おきみづき)の須田剛史料理長が医療専門職指導の下で献立を考案し、調理。参加者は試食を通して嚥下食の今後の課題を探った。
3年前、料理人や管理栄養士、言語聴覚士などの有志が集まり、嚥下食対応のスイーツを試作したことをきっかけに翌年、「鶴岡食材を使った嚥下食を考える研究会」(瀬尾利加子代表)を設立。硬さや形状など食事内容に制限がかかり、家族との外食ができないなどの嚥下障害の実態を受け、瀬尾代表が中心となって言語聴覚士や管理栄養士、両料理長と「嚥下障害対応の料理がいただける温泉旅館プロジェクト」を始動。試食や改良を重ね、試作品を完成させた。
この日は県内外から多くの参加申し込みがあったが、新型コロナウイルス感染拡大予防のため県内の医療従事者や関係者など約10人で開催。瀬尾代表や言語聴覚士などが講師を務め、参加者は同市の医療介護や高齢化の現状、嚥下食の抱える課題などについて見聞を広めた。
その後の試食会では新緑蒸し、柔らか庄内豚角煮、旬の庄内浜握りずしの3品を試食。茶わん蒸しには飲み込みを手助けするためのあんを掛け、角煮の豚肉は口の中でほぐれやすくなるように決められた温度で長時間蒸し上げ。すしのシャリは全粥(がゆ)にすることで粒感を抑え、海藻由来の凝固剤を使ってシャリ本来の形状を保ち、見た目も味も楽しめる五味五色が行き届いた嚥下食が並んだ。参加者は一品ずつ味や食感を確かめながら、料理人らに改善点や食べた感想などを話していた。
旅館などに食品を卸す業務用食品販売会社の営業、酒田市の伊藤優さん(29)は「今回のような取り組みをする料理人とお客さんとのパイプ役になりたいと思って参加。既製品の嚥下食とは違い、地元の物が使われ風味が全然違う」と違いを実感。延味さんは「食べやすく飲み込みやすいことが最優先の嚥下食。人として食べる喜びや生きる喜びがあると思うと、食感やおいしさをどこまで残せるか、ギリギリのところまで勝負した」と話した。
今回の試作品は今後、改善点を踏まえて改良し、旅館などでの提供の実現化を目指すとしている。
試食した嚥下食3品
試食会では両料理長と参加者が意見を交換し合った
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