庄内の食材にぴったりワイン 育苗ハウス活用で“一石二鳥” 月山ワイン山ぶどう研究所が販売開始
JA庄内たがわ月山ワイン山ぶどう研究所が、水稲の育苗ハウスを活用して栽培したブドウを使ったワインの販売を始めた。春先以外は使われないハウスの有効活用とともに、露地栽培に比べ病虫害に遭いにくく品質向上も期待できる“一石二鳥”の栽培方法。市場デビューした赤、白2種のワインに、地元のソムリエたちは「庄内の食材と合うワイン。赤は熟成させると、さらにおいしいワインになりそうだ」と評価している。
育苗ハウスの活用は2015年から、同JAが月山ワイン用のブドウ原料増産の一環で取り組みと普及を進めている。昨年は鶴岡市の藤島、羽黒、櫛引の各地域と庄内町立川地域、三川町で白品種のシャルドネと赤のメルローの2品種合わせて、計13人が45アールのハウスで栽培し、3・2トン収穫された。育苗ハウス活用によって、月山ワインの原料主産地の同市朝日、櫛引地域以外でのワイン用ブドウ栽培が広がりつつある。
ブドウの苗木をハウス内の側面に並べて植え、生育させる。水稲の育苗ハウスは4月中旬ごろから1カ月程度使われるだけで、その後は利用していない農家が多い。一方で、ブドウは葉を広げるのが5月以降のため、日照など育苗への影響はないといい、ハウス遊休期間の利用法として着目した。雨よけのハウス栽培のため病虫害も少なく、農薬散布の回数も減らすことができるなど、露地栽培に比べ低コストといった利点もある。
広さ約330平方メートルのハウスで40本栽培し、収穫量400キロが目標。昨秋は約260平方メートルで690キロを収穫した農家もあった。糖度は20度を超えるものもあるなど平均で18度を超え、高品質のブドウが収穫された。
先月26日に発売開始したのは白の「ソレイユ・ルバンシャルドネ2018」(750ミリリットル入り、2750円、898本)と、赤の「ソレイユ・ルバンメルロ2018」(750ミリリットル入り、2000円、622本)。いずれも18年産のブドウを使い同年秋に初めて単独で醸造したワインで、たる熟成で仕込んだ。同研究所醸造責任者の阿部豊和さんは「ハウスで雨に当たらない分、完熟を待つことができ、品種の特性を引き出せる原料となった。ブドウそのものの味わいを楽しめるよう醸造した。その果実味を楽しんでほしい」と話している。
新作ワインの発表会が先月26日、鶴岡市のグランドエル・サンであり、生産者や月山ワイン文化の会の会員ら約180人が参加した。地元の日本ソムリエ協会メンバーも顔をそろえ、同協会執行役員山形支部長でラウンジ「マーヤ」店主の清和真寿美さんは「白のシャルドネは、刺し身や野菜にも合い、庄内の料理に寄り添っている感じ。赤のメルローは、熟成を重ねれば、さらにベルベットのような滑らかさが出て、いいビンテージになりそう」と話した。同研究所のホームページでネット販売のほか、鶴岡市内の酒販店などで取り扱っている。問い合わせは同研究所=電0235(53)2789=へ。

育苗ハウス内で実を付けたワイン用ブドウ=昨年7月

育苗の中、ブドウが葉を広げ始めるハウス=昨年5月

育苗ハウス栽培のブドウを使った新作ワイン
関連記事
鶴岡市でアジア初開催 国際クマムシ学会開幕 世界各国の研究者120人集う
アジア初開催となる「第16回国際クマムシ学会」が23日、鶴岡市覚岸寺の市先端研究産業支援センターで始まった。クマムシの研究者として知られる慶應義塾大先端生命科学研究所の荒川和晴所長が同市に誘致した。2...
ワイン城漫画 手に取って ザ・本屋さんなどで発売 池田町民有志が制作
十勝ワインの歴史を知ってもらおうと、池田町民有志が制作した漫画「ゼロからのチャレンジ!! ~わたしたちの町にお城がある理由~」が、ザ・本屋さん(本部帯広)各店や池田ワイン城でも販売されるようにな...
カサン節の調べで聴衆魅了 島唄教室「山ゆり会」発表会 奄美大島龍郷町
島唄教室「山ゆり会」(森山ユリ子会主)の発表会が22日、鹿児島県龍郷町のりゅうゆう館であった。「町制施行50周年記念」を冠に、東京教室・奄美教室の会員約30人が日ごろの練習の成果を発表。奄美大...
地元音楽家が復興願った曲披露、沖縄戦の慰霊の日に合わせてコンサート【山口】
太平洋戦争末期の沖縄戦犠牲者を追悼する「慰霊の日」(23日)を前に、山口市阿知須のいぐらの館で22日、沖縄音楽のコンサート「古民家ミーツオキナワ」が開かれた。沖縄音楽を愛する宇部、山口市の2団体...