御神渡りの出現を期待して観察を続ける宮坂宮司(左)や氏子総代たち=19日午前6時47分
暖冬の影響でいまだに氷が張らない諏訪湖。湖面に張った氷がせり上がる御神渡り(御渡り)の判定と神事をつかさどる八剱神社(諏訪市小和田)が6日から毎朝続ける観察でも今季は薄氷が3回確認されただけだ。長年、冬の諏訪湖の観察を続けている宮坂清宮司(69)は「こんなに氷がない年は珍しい」と少し寂しげ。それでも宮司、総代の顔に諦めの色はない。
大寒までに薄氷3回
二十四節気の一つで一年で最も寒いとされる「大寒」を前にした19日朝も、宮司、総代の観察が行われた。湖面には穏やかな波が立ち、持参した温度計では、午前7時ごろの気温が氷点下2・5度、水温は2・5度。宮坂宮司は「中途半端な冷えだね」と苦笑いを浮かべた。「大寒」を境に季節は春へと向かい始める。ただ、直近で御神渡りが出現した2018年は2月に入ってから確認され、2月5日に拝観式を行っている。同宮司は「大寒を過ぎて一気に冷え込むこともあった。(御神渡りの)出現を期待し、祈ろう」。宮坂平馬大総代(66)は「水温が下がってきた。結氷に向けて状況は良くなってきた」と語った。
諦めるのはまだ早い
朝の観察が始まった6日は参加者が小刻みに震える寒さだった。「これから大寒に向けて気温が下がれば御神渡りができる」と前向きだった。ところが、8日の諏訪の気温は3月下旬~4月上旬の陽気となり、朝は雨が降った。傘をさしての水温測定に総代らの表情も曇った。
だが、17日には再び冷え込み、3回目の薄氷発見。「今にも消えそうだけど氷が張った」などと喜びの声が上がった。「諦めるのはまだ早い」
長野地方気象台によると、諏訪の気温は観察初日に今季最低の氷点下6・1度を記録したが、8、9、10日は最低気温が氷点下にすらならなかった。16、17日は氷点下4度台を記録したが平年を上回った。日本気象協会長野支店によると暖冬は、昨年に比べて偏西風の位置が北に偏っているのが原因という。偏西風の影響で今後も寒気が入りにくく、気温は昨年を上回る見通しだ。
氷点下10度が一つの目安
神様の恋路と言い伝えられ、全国から注目を集める御神渡りは昭和の終わりから、御神渡りができない「明けの海」が増えている。過去10年で御神渡りができたのは3回のみ。それでも一昨年は2月2日に御神渡りができた。氷がせり上がるには湖面が全面結氷し、氷点下10度近くまで冷え込む日が2、3日ほど続くのが一つの目安になるという。観察総代の笠原清一さん(62)は「暖冬でまだ氷が張っていないが、全面結氷するくらい冷え込んでほしい」、藤森雅史さん(62)は「観察総代として御神渡りを記録したい。氷点下10度まで冷えてくれれば」と期待している。
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