シナモンにがん細胞転移抑制効果 慶應先端研特別研究生 今野さん(鶴南高2年)明らかに
シナモンにがん細胞の転移抑制効果がある―。漢方薬・桂皮の新たな効能について、慶應義塾大先端生命科学研究所(鶴岡市)の特別研究生、今野裕貴さん(17)=鶴岡南高普通科2年=が、動物の胚を用いたスクリーニングを足掛かりとした実験で明らかにし、このたび京都府で開催された日本癌学会学術総会でポスター発表した。
同学会によると、学術総会参加者は9月26―28日の開催期間で合わせて約4700人で、国内外の病院や研究機関、製薬会社などに所属する医療従事者や研究者がほとんど。高校生による学術総会での発表は近年ないという。今野さんは「質問や、課題やアドバイスをもらうことができた。将来のためにと思い切って参加して良かった」と話している。
今野さんは、国立がん研究センター鶴岡連携拠点がんメタボロミクス研究室の中山淨二研究員(40)らの指導の下、「がん細胞転移抑制効果を有する漢方薬の探索」をテーマに設定。中山研究員が確立した「小型魚類ゼブラフィッシュ胚を用いたがん細胞転移抑制効果を有する化合物の探索法」を参考として、抗がん効果を有する漢方薬の探索実験に取り組んだ。
この中山研究員の探索法は、がん細胞転移と、胚の発生初期で見られる細胞運動の原腸陥入が同じ原理で行われることに着目したもの。今野さんは、原腸陥入の進行を阻害する漢方薬が、化合物と同様に、がん細胞の移動や浸潤の抑制に作用するとの仮説に基づき、実験などを実施した。
スクリーニングでは、第1段階で162種の漢方薬が原腸陥入を阻害するかどうかをテスト。著しく原腸陥入の進行を抑制したシナモンに関してはその後、がん細胞転移抑制効果を測定する検証実験を実施。高転移性ヒト乳がん細胞株の移動や浸潤への影響、ヒトがん細胞株を移殖したゼブラフィッシュの遠隔転移を評価したほか、ヒトがん細胞株のエネルギー代謝をメタボローム解析した。
こうした実験で「シナモン抽出物は高転移性ヒト乳がん細胞の移動や浸潤に対して濃度依存的に抑制する」との結果を得た。今野さんは「実験は朝6時からのゼブラフィッシュの卵採取から始まる。がん細胞数のカウントも地道な作業。日本癌学会学術総会と学校の試験が日程的に重なるなど準備が大変だった。だが、がん細胞への効能がスクリーニングで明らかになっていくのは興奮した」と振り返る。
今野さんはこの研究を7月に鶴岡市で開かれた鶴岡バイオキャンパスでポスター発表し、地元枠で最高賞となる市長賞を受賞。中山研究員からの誘いを受けて今回の日本癌学会学術総会に参加し27日、「シナモン抽出物のがん細胞転移抑制効果の検証」との題で1回4分間のプレゼンを行った。
指導した中山研究員は「高校生としてはよくやった。かなり練習したようでプレゼンも良かった。民間療法の効能を実験で科学的に証明し、インパクトがある」と評価。今野さんは「シナモンは人体でも同様の抗がん効果を示す可能性がある。引き続きがんについての研究を続けていきたい」と話した。

ゼブラフィッシュの水槽を持つ今野さん。右は指導する中山研究員=7日、鶴岡市
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