助成制度活用もバス運転士の定着進まず

路線バスの後部に貼られた免許取得費助成制度の広告
宇部市交通局(大谷唯輝局長)が、運転士確保対策として2012年度から始めた大型二種免許取得費用助成制度。これまで16人が制度を利用したが、現在も局に残り、バスの運転士として活躍するのは3人しかいない。運転士不足は全国的な傾向であり、採用には一定の成果は見られたが、定着には結び付いていない。同局では「働く前のイメージと、実際に働きだしての労働環境のギャップが原因として考えられる。制度を廃止することは考えておらず、働き方改革と待遇改善の両面の対策が必要」と頭を悩ませている。 同制度は、採用予定の嘱託運転士の免許取得費を、50万円を上限として助成するもの。業界全体が運転士不足という問題を抱えていたため、運転士の資格者を増やすきっかけにしたいという思いもあり、創設した。路線バスの後部に広告を貼るなどして、制度を周知している。 同局によると、普通免許所持者が大型二種免許を取得する際の平均的な費用は30万円程度。これまで制度を利用した人で、上限額を超えたケースはなかった。制度は何度か見直されており、現在、取得費は、採用後最初の給与とその後の賞与の支給時に5万円ずつ分割で給付されている。 制度利用者の推移は、12年度4人、13年度3人、15年度3人、16年度3人、17年度2人、19年度1人。14年度と18年度はいなかった。入局当時の年齢は、20歳代1人、30歳代3人、40歳代6人、50歳代6人で、転職者がほとんど。多くが入局から2、3年で退職している。転職先は、把握できていないという。 離職率が高い理由の一つとして、長時間の拘束とそれに見合わない賃金の低さが考えられる。定時運行が鉄則の路線バスは朝と夕方に集中し、運転のはざまは休憩時間と見なされる。実働は7時間余りだが、拘束時間は長いときで13時間にも及ぶ。在職年数に違いはあるものの、嘱託職員の年収は正規職員の半分以下の約350万円と待遇面の格差も大きい。夢や希望を持って入局しても「現実とのギャップ」が、流出に歯止めをかけられない要因としてある。 同局の運転士数は、定員に対して8人不足の70人。交通事業課の八木巧課長は「離職率が高いという現実はあるが、助成制度によって運転士の確保には一定の成果がある」とした上で「市民サービスの低下が一番あってはならないこと。時間短縮や平日のみ勤務など多様な働き方や、賃金アップといった労働環境の改善に向けて考えていく必要がある」と語った。
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