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紀伊民報社

店がない人気「店」 隣の主婦がパン屋さん

コッペパンを作る更井和代さん(田辺市上芳養で)

 昔ながらの素朴な味から高級食パンまで、個性的なパン店がひしめく紀南で、店舗を持たない「パン屋さん」が増えてきた。イベントや産直店のみでの販売だが、固定客が付く人気「店」もある。

 店舗のない「パン屋さん」は、子育てが一段落した主婦が営むケースが多い。通常のパン店のようにさまざまな種類があるわけではないが、家庭的な味や、添加物を加えないなど「安心」面などが支持を得ているという。
 和歌山県田辺市上芳養の主婦更井和代さん(58)は2年ほど前から、「kaze to sora(かぜとそら)」の店名でコッペパンを販売している。イベントに出店するほか、市内の産直店にも出品する。
 もともとパンが好きで、食べ歩きしたり、家で作ったりしていた。販売を始める前にパン教室で学び直したが、素材選びなど基本は「子どもに作っていたパン」だ。コッペパンには農家から直接仕入れた季節の果物で作るジャムや地元和菓子店のあん、焼きそばなどの総菜を挟む。
 家業の梅の栽培や加工、家事の合間を縫ってのパン作りだが「黙々とパンを焼いていると、嫌なことも忘れる。私自身の楽しみになっている」という。自家製ジャムやドライフルーツも販売する。
 田辺市中三栖の主婦山本智恵さん(45)は5年ほど前から「やまもとベーカリー」として、あん食パンとシフォンケーキを販売している。イベントへの出店のほか、市内の雑貨店にも出品している。
 趣味でパン作りをしていたが、いろいろ作ってみた中であん食パンが「自分の好きな味で、子どもたちからもリクエストされる」と一番の自信作。あんの配合など独自に研究したという。
 あん食パンは一度に6個しか焼けない。イベントに出品する時などは午前0時からパン作りを始め、焼きたてを次々運んで販売している。
 パンや菓子を販売してみたいという人は多いが、課題は製造施設の許可取得。更井さんや山本さんの場合は手近に使える空き家などがあったため、比較的少額の投資で済んだが、一から準備すると相当な負担になるという。
 山本さんは「レンタルできる製造施設があれば利用したい人は多いはず。販売してみれば客の反応が分かるし、手応えをつかめば起業する人だって生まれるかもしれない」と話している。

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