庄内の日本遺産活用を考える
本保さんは「日本遺産に寄り掛からないでほしい。日本遺産は外国人にとってまだ何かよく分からないもので、世界遺産より下だと思われる。山形、庄内が自信ある資産だというところから出発して」と訴えた。
庄内地域の3つの日本遺産にスポットを当てた「庄内観光交流講演会」が31日、酒田市のガーデンパレスみずほで開かれた。初代観光庁長官で国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所代表の本保芳明さんの講演と、県国際戦略検証委員長を務めるプランニング・ディレクターの古田菜穂子さんとの対談を通じ、日本遺産を活用した庄内の観光振興策について考えた。
庄内は3つの日本遺産(出羽三山、北前船寄港地、サムライゆかりのシルク)がある全国でもまれな地域。今回は、本保さんと古田さんがUNWTOの世界観光会議(2月1―3日、山形市内など)に出席のため来県したのに合わせ、庄内開発協議会(会長・丸山至酒田市長)、庄内観光コンベンション協会(会長・皆川治鶴岡市長)などが主催。庄内地方の行政や観光関係者ら約130人が参加した。
初めに本保さんが「庄内の日本遺産を強力な宝にするためには?」と題して基調講演。庄内については「水田の広がりや山、海の景観、出羽三山などの伝統、歴史など素晴らしいが、あまり注目されてこなかった」とした。最近、日本遺産認定や外国クルーズ船の寄港などの動きが出て、注目を集めつつある背景については「もともとの魅力の豊かさとインバウンド(外国人観光客)急拡大の追い風、北前船寄港地フォーラムなど長年努力してきた成果」と分析。さらなる飛躍に向けては努力の継続とともに「資源の磨き上げ」の必要性を挙げ、「相手が求めている価値あるもので、自分が提供できるものをきちんと出すことが大切。単なる田舎自慢や、自分の持ち分でないところで頑張っても駄目」などとアドバイスした。
続く対談で、古田さんは「東北には外国人にとって未知で、神秘的なイメージがある。特に山形は多様性があり、宗教でない、人の心に届く精神文化が観光資源になっている。特に庄内は顕著」と、身近に山伏がいたり、当然のごとく混ぜ物のない餅を出す風土などを挙げ、「そうした文化を外国人にその人の言葉で語ってもらう戦略が必要」と発信の在り方を提言。ターゲットには、短期的にはアジアも大切としながらも、長期的には精神文化への関心が高い「欧州」を見据える方向性を示した。
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