能代ミュージカル熱演

総勢約150人のキャストが熱演した能代ミュージカル(能代市文化会館大ホールで)
市民手作りとして知られる能代ミュージカル第38話「能代湊 北前船異聞~日本海を命がけで航行する男たちの夢物語~」は31日、能代市文化会館大ホールで上演された。昨年5月に同市が日本遺産「北前船寄港地・船主集落」に追加認定されたことを記念し、北前船が能代にもたらした文化やその時代に生きた人々の営みを描いたストーリー。能代吹奏楽団の生演奏やキャストによる踊り、混声合唱なども繰り広げられ、訪れた約1千人の観客を楽しませた。
物語は文政3(1820)年、越前国敦賀(現在の福井県敦賀市)の船頭・太田屋喜兵衛の入港で幕開け。能代湊の廻船問屋・越前屋久右衛門や喜兵衛の妻のお松らに出迎えられる中、2年前の航海で息子の喜之助を亡くした過去を思い出し、自身の利益のためだけでなく、能代湊の人々の生活のために船に乗ることを改めて誓った。
同時期に能代湊に入港した永福丸に乗る若い水主・末吉は、お松の店で働く貧農の娘・キクに好意を寄せ、「船頭になって、広い海の向こうに旅立つ」夢を語った。心を通わせた2人は、再会を約束して別れたが、出港した永福丸は青森県深浦沖で座礁、船頭が積み荷の御用銅を地元の商人らと共に隠す事件(深浦御用銅事件)を起こした。
無実の罪を着せられた末吉は、キクに会おうと能代に戻った。事情を聴いた喜兵衛は、越前屋と越後屋太郎衛門と相談して、新造した「能盛丸」の水主として大阪に連れて行くことを決めた。秋田藩の役人が取り調べを行おうとしたが、越前屋と越後屋が機転を利かせて追い払った。末吉はキクとの結婚、再会を約束して大阪へ旅立った。
劇中では、能代吹奏楽団が演奏したほか、たなはしあゆこバレエスクール、戸松くみ子ダンススタジオの生徒たちがあでやかな舞を次々と披露。メインキャストが心に秘めた思いを歌い、会場を盛り上げた。最後はキャスト全員が舞台上に並び、オリジナル曲「能代湊よ永遠に」を高らかに歌い上げて幕を閉じた。
喜之助と末吉役の塚本雅広君(能代松陽高3年)は「二人に共通する『海の向こうに何があるのか』という冒険心を自分も持ちながら演じた。稽古の成果を出し切れた」、キク役の高田美静さん(同)は「明るくて元気なキクを演じることができた。無事に終えることができて、ほっとしている」と笑顔を見せた。
能代ミュージカルを初めて見たという同市万町の80代男性は、製材業などで栄えていた幼少期を振り返り「能代港がにぎわっていた雰囲気を感じることができた。また、活気あふれる市内や港を見てみたい」と話していた。キャスト、スタッフとして出演した友人に誘われた能代松陽高3年の田村葵さんは「訛(なま)りのあるせりふもあったけど、しっかり演じていてすごかった」と語った。
能代ミュージカルは、NPO法人能代市芸術文化協会の主催。脚本や音楽、キャストなどを全て市民が手掛けており、能代の歴史や文化に密着したテーマを取り上げている。今回はキャスト、スタッフ総勢約150人が舞台を作り上げた。
ミュージカル制作委員会の関口美奈子委員長は「舞台を通して、多くの市民の皆さんに北前船の歴史、もたらされた文化の数々を知ってもらえたと思う。これらを次の世代に伝えることが私たちの目標だっただけに、とてもうれしく思う」と話していた。
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