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胆振東部地震で家族や自宅失う 山本さん、父の思い背負って農業再開へ

今春から再び始める農作業を前にトラクターを調整する山本隆司さん=厚真町幌内

 胆振東部地震の土砂災害で家族3人や自宅を失い、田畑も被害に遭った厚真町の山本隆司さん(54)が悲劇を乗り越えて農業再開へ奮闘している。両親や妹を亡くして一時失意のどん底に陥ったが、周囲の励ましを受け、”米作り名人”と呼ばれた父の後を継いで農家を続けることを決意。「何も無いところから一人で再び始めたい」と、今春の田植えの準備を進めている。地震発生から6日で半年を迎える。

 山本さんは同町幌内で育ち、札幌の大学卒業後、コンピューター関連の会社に勤務。27歳の時、退職して実家の農業を手伝うようになった。20ヘクタールの水田と畑で父と一緒に米やカボチャ、大豆などを生産。酒米「彗星」も作り、北海道中小企業家同友会苫小牧支部美苫みのり会が販売する地酒「美苫」に使用されていた。

 そうした中、昨年9月6日未明に胆振東部地震が発生。幌内の自宅裏の山林斜面が崩壊し、流れ出た大量の土砂で家が丸ごと100メートルほど押された。2階で寝ていた隆司さんは、体の一部が土砂に埋まりながらも自力で脱出。しかし、1階にいた父辰幸さん(当時77)と母リツ子さん(同77)、妹ひろみさん(同50)は行方不明となり、後に遺体となって見つかった。

 隆司さんは奇跡的に助かったものの、頸椎(けいつい)や腕の骨折など大けがを負い、苫小牧市内の病院に入院。治療で回復したが、愛する家族を亡くし、強いショックを受けた。農機具も田畑も土砂の被害に遭い、退院後しばらく、農業を続けようという気持ちにならなかった。

 失意を味わっていた中、親戚から「手伝うよ」と言葉を掛けられ、少しずつ心を整理。昨年秋には共に美苫の酒米を作ってきた同町富里の農業佐藤泰夫さん(63)や、美苫みのり会メンバーの励ましも受けて再開を決意した。

 現在は同町表町のアパートで暮らしながら、約10キロ離れた幌内の自宅跡に通い、被害を免れた納屋の中を整理したり、新たに購入したトラクターの調整を行ったりと、田植え前の作業に汗を流している。田んぼや畑には土砂が残り、用水路の整備もこれから。「稲の作付け面積は前年の5分の1になりそう。美苫の酒米を作っていた田にも土砂が流れたため、離れた場所で生産していくしかない」と言う。これまで家族で行ってきた農作業も今後、隆司さん一人で当たるため、苦労は続くものの「何とか頑張っていきたい」と前を向く。

 米作りに人生を懸けてきた父、一生懸命に田畑の仕事に励んだ母、体が弱かったものの心優しい妹。震災の犠牲になった家族のそれぞれの思いを背に再起を誓う。

 美しい里山、農村の景色が広がっていた幌内や周辺の集落。土砂災害に見舞われた後、その自慢の風景も以前と大きく変わってしまった。しかし、この地で農業を復興させたいという思いは強い。

 「一人になり、ふと寂しさを感じることもある。けれど、多くの人たちに支えられている。父の後を継ぎ、農業に没頭しながら前へ進んでいきたい」と、きょうも準備に余念がない。

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