助産師出向で協定
出産に関わる人材が大規模医療機関に偏在する傾向が強まる中、酒田市の日本海総合病院を運営する県・酒田市病院機構(栗谷義樹理事長)は30日、県の助産師出向支援事業を活用し、同市ゆたか二丁目の産科・婦人科・小児科医院「いちごレディースクリニック」(太田聡院長)に2月1日から、助産師1人を出向させる協定を締結した。
県によると、庄内地方の分娩(ぶんべん)取り扱い施設は、2008年の10施設に対し、18年は5施設へと半減。分娩件数は07年の2572件に対し、17年は2056件と減少している。また、17年度の県全体の出生数を医療機関別に見ると、病院が5457件(64・4%)、診療所が3015件(35・6%)、就業助産師342人の就業先の内訳は病院78・6%、診療所12・2%と、出産に関わる人材が大規模医療機関に偏在。特に異常分娩の取り扱いは病院に集中し、診療所の助産師は経験を積む機会が少ないなど、地域で安全・安心に出産するためには、偏在の是正が課題となっている。
助産師出向支援事業はこうした情勢を受け、病院の助産師が診療所に出向する場合、給料の差額補填(ほてん)などを行うもので、13年度に県看護協会が厚生労働省の助成を受けて始め、15年度からは県が同協会に委託する形で実施している。これまで、14年3月から2年間、米沢市立病院から同市内の診療所に助産師延べ4人が出向したのに続き、今回が2例目となる。
日本海総合病院から出向するのは、1997年4月から同病院で助産師として勤務する主任看護師・上野美紀さん(44)。出向期間は当面、2月1日から3月末までの2カ月間だが、新年度も継続の方針で、県が予算要求しているという。
この日、日本海総合病院で行われた協定締結式では、栗谷理事長と太田院長、県看護協会の井上栄子会長の3人が協定書に調印。井上会長は「医師の業務の軽減と助産師の実践能力の強化、偏在の是正につながると期待」、太田院長は「人材不足で募集してもなかなか来ない。支援事業をぜひ成功させたい」、栗谷理事長は「お産施設の減少は単に人的な問題でなく、国や社会がどのような方向に進もうとしているかの要素が大きく、そのひずみが出ている。より良い事業にブラッシュアップしたい」とあいさつ。
上野さんは「病院に戻ってきた時に貢献できるものを学んできたい」と抱負を述べた。
両医療機関の助産師数は、日本海総合病院が36人(2018年1―12月の分娩数は523件)、いちごレディースクリニックは7人(同317件)となっている。

調印後に協定書を披露。左から栗谷理事長、上野さん、太田院長、井上会長
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