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酒田出身マラソン選手 県人初五輪出場 茂木善作へ関心高まる

 NHK大河ドラマ「いだてん」の主人公で、日本人として初めてオリンピック(1912年ストックホルム大会)に出場した「日本マラソンの父」こと金栗四三が注目される中、金栗の東京高等師範学校(現・筑波大)の後輩で、酒田市出身のマラソン選手・茂木善作(1893―1974年)への関心が地元酒田で高まっている。第1回東京箱根間駅伝競走大会(箱根駅伝)で東京高師のアンカーとして大逆転劇で同校を優勝に導いたほか、金栗と共に、県人として初めてオリンピック(1920年アントワープ大会)に出場するなど活躍した郷土のヒーローだ。

 茂木は飽海郡豊原村(現・酒田市本楯地区)の農家の三男として生まれた。1913(大正2)年に県師範学校を卒業し、蕨岡尋常高等小学校(現・遊佐町)の教員となった。さらに向学心に駆られ18(大正7)年には東京高師に入学した。

 2年次の20(大正9)年2月に開かれた第1回箱根駅伝(当時は四大校駅伝競走)は、五輪に出場して国内の競技力向上の必要性を痛感した金栗が中心になって企画したもので、母校の東京高師と、早稲田、慶応、明治の3大学の計4校が出場。東京高師の最終10区の茂木が2位でたすきを引き継いだ時、トップ明治とは11分52秒の大差があったが、茂木は猛追し、ゴール近くの新橋付近で明治を抜き、結局、2位明治に25秒差をつけて逆転優勝した。

 茂木は同年8月のアントワープ(ベルギー)五輪のマラソンに、金栗や、同じく箱根駅伝に出た三浦弥平(早大)、八島健三(明大)の各選手と共に出場。金栗が16位、茂木が20位、八島が21位、三浦が24位となった。

 茂木は翌21(大正10)年5月、上海で開かれた第5回極東選手権競技大会のマラソンで2位。そのほか、東京高師在学中に800メートル、1500メートル、1万メートルの各競技で日本記録を樹立した。

 卒業後は旧制水戸高の助教授を経て満州に渡り、旅順工科大助教授、吉林師道大教授を経て43(昭和18)年、承徳師道学校長に就任。戦後は46年に帰国して本楯、後に若宮町二丁目に住んだ。50年に脳梗塞で倒れ、その後は病床生活を送り、74年に81歳で亡くなった。存命中は長距離選手育成への願いを込め、酒田市に寄付金を寄贈。市はこれに基づき67年、茂木杯ハーフマラソンを創設し、2011年の第45回大会まで続いた。12年からは酒田つや姫マラソン(酒田シティハーフマラソン)として引き継がれている。

 晩年に生活を共にした六女の茂木満子さん(89)=酒田市若宮町二丁目=は「父は帰郷後にすぐ倒れ、寝たきりになった。同じように箱根駅伝と五輪に出た三浦さんは故郷・福島県で後進の育成に尽力したので、福島は山の神・柏原竜二選手をはじめ多くの長距離選手が育っている。父も元気だったら、地元で後進の育成に尽力したに違いないが、それができずに悔しい思いもあったはず」とする。茂木の人柄については「身長185センチほどと大きく、体は筋肉質だった。姉たちには厳しい面もあったようだが、末っ子の私には真面目で優しい印象しかない。農家の三男が学校に通わせてもらえるだけで幸せだったようで、親や兄弟にはいつも感謝していた」とする。茂木が倒れて間もない1955年ごろには、本楯の家に、金栗が会いに来たこともあったという。

 テレビで駅伝やマラソンを観戦するのが好きという満子さんは「父が五輪に出てちょうど100年後の2020年に東京五輪があるのも何かの縁。今から日本人の活躍が楽しみ」と期待する。

 一方、茂木の生地である本楯地区の住民は、茂木の妻で中学教師を務めたかうさん(故人)の寄付金で基金を造り、茂木善作顕彰会を設立。1965年から毎年6月、地区の運動会で茂木善作顕彰マラソン大会を開き、小学生から一般までが健脚を競っている。基金を財源に、成績上位者に賞状とメダルを贈っているほか、秋の市巡回駅伝で本楯チームを後援している。

 同顕彰会長で本楯コミュニティ振興会長でもある青葉徹さん(73)は「地区の運動会など機会を捉え、茂木のことを話している。茂木は地区の誇りで、後世に伝えていきたい」とする。また、「市のハーフマラソンから『茂木杯』の冠がなくなったのは残念。大河ドラマには出るかは分からないが、これを機に、茂木に再び光が当たればうれしい」と話している。

アントワープ五輪に出場した時の茂木(右)第1回箱根駅伝でゴールテープを切る茂木(写真提供・茂木満子さん)

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