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アスベストの悪性胸膜中皮腫 代謝の仕組み解明に迫る

 鶴岡市にある国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点「がんメタボロミクス研究室」の佐藤雄三研究補助員(35)=鶴岡市出身=らの研究グループが、悪性胸膜中皮腫について、代表的な治療薬がどのようにがん細胞の代謝産物に影響しているかを探った論文を発表した。治療薬が効く細胞と効きにくい細胞をメタボローム解析で調べ、がん細胞の代謝の仕組みの解明に迫る内容。研究成果は、治療が難しいとされる胸膜中皮腫の新しい治療法の開発につながることが期待される。論文は12日、スイスの薬学専門誌のオンライン版に発表された。

 希少がんの胸膜中皮腫は、アスベスト(石綿)を主因に肺を覆う胸膜に発生する。有効な治療法がなく、国内の患者数(死亡者数)は増加傾向にある。

 佐藤さんは、胸膜中皮腫の代表的な治療薬の代謝拮抗(きっこう)薬「ペメトレキセド」が、がん細胞の代謝産物にどのように影響しているかに着目。患者由来の3種類の胸膜中皮腫の細胞をメタボローム解析して代謝を調べ、治療薬に対する感受性を追跡した。その結果、薬が効く感受性の高い細胞では、核酸の合成に関連する一部の代謝産物が他の細胞より低下することが分かった。薬の効き目が小さい細胞ではこうした変化は見られなかった。さらに今回の発表では、治療薬の標的より下流にある経路の代謝産物がバイオマーカーや薬剤耐性に関連している可能性を見いだした。

 佐藤さんは同市川尻生まれ。鶴岡高専専攻科を経て山形大工学部の大学院に進み修士課程修了。その後、庄内地域産業振興センターで産学官連携推進コーディネーターを務め、世界最先端の慶應先端研のメタボローム解析技術に触れ、これを活用した研究を志向。昨年4月、同市に開設された鶴岡連携研究拠点の研究補助員となり、今回の研究に着手した。論文のタイトルは「悪性胸膜中皮腫における代謝産物の影響及びその評価」。

 慶大大学院政策メディア研究学科博士課程の社会人大学院生でもある佐藤さん。研究を始めて1年余りで、今回の論文の筆頭筆者になり、「提出した論文に対して厳しいコメントがあり、仕上げるのに苦労した。掲載され、研究者としての一歩をしるすことができたという思いが強い。研究を続けていきたい」と語った。

 鶴岡連携研究拠点は、地方創生に伴う国の機関の地方移転の一環で、同市に開設された。国立がん研究センターと慶應先端研、庄内地域産業振興センターとが連携し、がんの診断薬などの研究開発が進められている。今回が3機関共同での初の論文発表。佐藤さんが所属するチームの牧野嶋秀樹チームリーダーは「メタボローム解析を活用した新規性が評価された。ぜひ研究を継続し、将来の鶴岡・庄内のために活躍できる人材になってもらいたい。それが、鶴岡連携研究拠点の開設目的でもある地方創生につながる」と話した。

 慶應先端研の冨田勝所長は「昨年設立された国立がん研究センターの鶴岡拠点と慶應先端研の連携で、大きな研究成果を国際論文として初めて発表することができた。これからも世界最高峰のがん研究を共同で推し進めていきたい」とコメントした。

悪性胸膜中皮腫の代謝産物に関する論文を発表した佐藤さん=鶴岡連携研究拠点

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