「人生で一番うまいカレー」「帝国ホテル級の味」。絶賛の声がインターネット上で飛び交い、注文が殺到する。通販で注文から約10カ月待ちという異例の人気を博しているのが、豊橋市の居酒屋「飛騨路」が作る「飛騨牛カレー」だ。きっかけは、馬飼野亮太さん(30)が、父直樹さん(63)とともに出演したYouTube番組「通販の虎」だった。

動画出演する馬飼野直樹さん(右から2人目)、亮太さん(同3人目)親子
飛騨牛カレーは1950年代、亮太さんの祖父がスパイスと粉を独自に調合したカレーを販売したことにさかのぼる。固形ルーがまだなかった頃。その味と精神は直樹さんへと受け継がれ、20年かけて磨き上げたレシピが「飛騨牛カレー」である。バラ肉6㌔を10分おきに4日間かけて煮込む。10分ごとにかき混ぜ、浮いた油を丁寧にすくい、スパイスと旨味を重ねていく。化学調味料は使わず、味のすべてが手作業に支えられている。亮太さんは「たとえレシピを手に入れても、飛騨路にしか出せない味」と自信をのぞかせる。
亮太さんは名古屋大学を卒業後、保険会社を経てボートレーサーの道を志すも病を機に帰郷。23歳で店を手伝うようになり、今では大将の右腕に。さらに25歳で運営会社「HTH」の社長に就任すると、カレーを全国に広めるべく、一昨年には「全国ご当地カレーグランプリ」に出場し優勝、昨年はクラウドファンディングに挑戦した。だが今年に入り、グランプリの中止が決まった。次の手が見えず悩んでいた中、知人の経営者に「通販の虎」に誘われた。
出演が決まったのは3週間前。急ピッチで大将や祖母に話を聞きながら、家族の歴史やカレーへの思いを深掘り。「なぜカレーを」「なぜ広めたいのか」という根本を見つめ直した。審査員の鋭い指摘に備え、質疑応答のリストを50項目用意、資料作成やプレゼン内容の構成には文書生成ツールも活用した。不安もあった。「出演すればたたかれるかもしれない」。実際、亮太さんは本番前に4㌔痩せるほどだったが、「挑戦者にしかチャンスが回ってこない」と出演を決めた。
番組には、通販の虎代表の桑田龍征氏、ガチレビュー専門家の島やん氏ら5人が審査員として出演。通販サイトに掲載できるか審査される。亮太さんの熱意と完成度の高い味に対し「2000円でも安い」「肉が飲み物のようだ」と高評価を受け、その場で通販販売が決定した。
放送後の反響は想定の4~5倍。全国から2100件を超える注文が届き、約1万食が販売された。製造キャパの限界を超え、現在は入手困難の状態が続く。今後は名古屋で飛騨牛カレーを使った料理が並ぶ店をつくりたいという。「自分たちの味を食べられる場所を全国に増やしたい」と意欲を見せる。

10カ月待ちのカレー
カレーには地域と未来への思いが込められている。「豊橋が『食の街、東三河』として知られるきっかけになればうれしい」と直樹さんは願う。亮太さんは「三重県の過疎地域を訪れた際、子どもはおらず農業や商店はなくなってしまった様子を目の当たりにし、豊橋の環境は当たり前ではないと実感した。このままでは10年、20年後にここで居酒屋が成り立つか不安。だからこそ、企業として価値を高めていく必要があるし、僕らが豊橋の飲食店を引っ張らないと」と力を込めた。
カレーは専用サイト=QRコード=から。5個セットで1万円。

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