赤線の枠内が国の史跡に追加指定される富士見町の「曽利遺跡」（井戸尻考古館・金剛建設提供）

国の文化審議会は２０日夕、文部科学大臣に対し、長野県の富士見町境にある「曽利遺跡」を、既に国の史跡になっている「井戸尻遺跡」へ追加指定するように答申した。曽利遺跡は、現在の同町井戸尻考古館の敷地を含めた面積１万３４５９平方メートルの範囲。縄文時代の大集落跡で、貴重な遺物が数多く出土している。今後、官報告示を経て県内３９件目の国の史跡となる。

曽利遺跡に近い井戸尻遺跡は１９６６年６月、国の史跡の指定を受けた。答申では、名称をこれまでの「史跡井戸尻遺跡」から新たに「史跡井戸尻遺跡群」と名付け、その中に井戸尻遺跡と曽利遺跡を位置付ける内容を示した。井戸尻遺跡と合わせた総面積は２万４８０２平方メートルになる。

曽利遺跡を研究する井戸尻考古館学芸員の副島蔵人さん（４２）によると、曽利遺跡は６０年の第１次調査後、９次調査までに９０軒以上の住居址を発見。さらに近年の第１０～１２次調査で、住居址２０軒と小竪穴１６９基が見つかるなど「縄文中期初頭から末葉にかけての拠点的な大規模集落」であることが分かっている。

同遺跡からは多くの出土品があり、縄文土器７点と「信州の特色ある縄文土器」１点が県宝に指定されている。副島さんは「中部高地や縄文中期の集落構造を考える上で、曽利遺跡は極めて高い価値が認められる」と述べ、香炉形土器などの出土品についても「原始芸術的な視点で重要なものが多い」と指摘した。

同館の小松隆史館長は「今年は曽利遺跡の土器７点が県宝に指定されて５０年。節目の年に史跡に指定されるのはうれしい」とし、「我々の本来の業務である遺跡の保護に道筋が付けられたことは非常に重要。曽利遺跡に携わった多くの皆さんの思いが、国の史跡という形で開花することにも感謝したい」と述べた。

今回の答申では曽利遺跡のほか、佐久市にある後期石器時代初頭の遺跡「香坂山遺跡」の国史跡への指定も盛り込まれた。