漁業者の救助支援に新システム検討 県漁協などGPS活用 安全操業の課題解決へ実証実験
県漁業協同組合(本間昭志代表理事組合長)と県水難救済会は12日、酒田市の酒田港で、漁業無線機を持たない小型漁船員の救助要請のため、GPS(衛星利用測位システム)を活用した携帯端末で位置情報を特定する海難救助支援システムの実証実験を行った。西村盛県漁協専務理事は「普及すれば小型船舶事故や海中転落事故での死亡率減少につながる」と期待を寄せた。
これまで事故漁船からの救助要請の多くは携帯・船舶電話、漁業無線などが主な方法だったが、海中転落時や漁業無線機のない小型磯見漁船などからは救助要請ができないことが課題だった。今年8月にも酒田・鶴岡両市の沖合で高齢漁業者の海中転落事故で2人が死亡している。
システム開発事業の「M・S・K」(本社・埼玉県所沢市、水野尚淑社長)が開発したシステムは、パソコンと受信機で基地局を構成。漁業者が端末を身に着けることで、基地局から半径約10キロ圏内の位置情報を把握。緊急時はワンタッチで救助要請を発信でき、救助到着時間などを端末で受信できる。実証実験には多くの漁業関係者らが立ち会い、水野社長がシステムについて説明。その後、県漁協本所屋上に基地局を仮設し、約3キロ離れた港内の漁船に要救助者がいるとの想定で実証実験を開始した。海上でイカ釣り船に乗った遭難者役の進藤優一県小型いか釣漁業協議会副会長が「SOS信号」を発信すると、受信した基地局ではアラートが鳴り、緊急事態と位置情報を知らせた。
端末が大きくライフジャケットに入らないことや、障害物があると通信が途切れることがあり、実験に参加した進藤副会長は「まだ課題は多いが、複雑な操作がないのでこれまでの遭難信号より役立つと思う」と話した。西村専務理事は「漁業無線もスマートフォンもない状態で漁に出る高齢漁業者が多い。死亡事故を減らし、安全操業に向け、今後前向きな導入と普及を検討したい」と述べた。
手のひらサイズの端末から漁業者の位置情報を発信
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