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紀伊民報社

那智谷遺族会が解散 紀伊半島大水害 地元2地区に事業託す

那智谷大水害遺族会の運営資金を地元区長に託す岩渕三千生さん(右)=9日、和歌山県那智勝浦町井関で

 紀伊半島大水害(2011年9月)で29人が犠牲になった和歌山県那智勝浦町の「那智谷大水害遺族会」が解散し、長年代表を務めてきた岩渕三千生さん(63)=三重県紀宝町=が9日、地元の井関区と市野々区に遺族会の運営資金と、紀伊半島大水害記念公園にある慰霊碑への献花などの事業を託した。受け継いだ地元区長は「紀伊半島大水害を伝えていくことはわれわれの使命」と話した。
 遺族会は慰霊と地域の復興を目的として12年1月に発足。那智勝浦町井関に慰霊碑を建て、毎月2回ほど献花をしたり、大水害で被害が発生したとされる時間に合わせて9月4日未明に慰霊の行事を営んだりする事業を続けてきた。
 遺族会では当初から昨年9月に迎えた十三回忌を区切りとする方針だったことから、会員25人にアンケートを送って意向を聞いた上で解散を決めた。
 記念公園への献花と追善供養のための町花火大会への寄付については、井関区と市野々区が引き継ぐ。岩渕さんが井関地区にある集会所を訪れ、井関区の石井康夫区長(69)と市野々区の太田博久区長(73)に運営資金を手渡した。運営資金は、遺族会が発刊した災害記録写真集の収益金や、寄せられた支援金を積み立ててきたものという。
 石井区長は「遺族の気持ちを尊重してできる限りのことはしたい」、太田区長も「身の引き締まる思い。遺族会が継続してきた事業を引き続き責任を持ってやっていきたい」と話した。
 慰霊行事や清掃活動は岩渕さんが中心になって続けていくといい、岩渕さんは「快く受け継いでくれることになり、ありがたい。遺族会は解散はしたが、遺族に解散はない。教訓を伝えていくため、これからも頑張っていきたい」と話していた。

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