デフバスケ女子代表がアジア太平洋初V HCは帯広聾学校の坂本教諭
帯広聾学校教諭の坂本知加良(ちから)さん(44)がヘッドコーチを務める、聴覚障害者によるデフバスケットボール女子日本代表が29日、「アジア太平洋ろう者バスケットボール選手権」で、大会開催国のオーストラリア代表を85-67で下し、初優勝を決めた。坂本さんは「みんなが信じてついてきてくれた。結果を出せてうれしい」と喜びをかみしめている。

決勝戦で手話を使って選手に指示する坂本さん(中央、坂本さん提供)
「手話で意思統一」実る
女子の選手権は22日から始まり、予選は日本、オーストラリア、台湾の3カ国が、それぞれの国と2戦ずつ計4戦を戦った。日本は持ち前のスピードを生かした速攻と、手話を取り入れた「サインバスケ」を繰り広げ、全勝。全ての試合で3桁得点を挙げる圧倒的な強さを見せ、1位通過を果たした。
29日の決勝は、2位のオーストラリアと対戦。予選とは違うコートでのゲームになったことなどから前半は調子が上がらず、相手ペースに合わせてしまい、ハーフタイムまでで45-41と、ほぼ互角の展開になった。
ただ後半は、坂本さんの作戦がピタリとはまった。第3ピリオドの開始から数分間、オールコートディフェンスを敷き、プレッシャーを強くしたことにより相手のミスを誘発。次第にオーストラリア陣内でのプレー時間が増え、流れをつかむと最終的に18点差で勝利した。
優勝後、歓喜の輪の中心に、拍手の手話で喜びを表現する坂本さんの姿が。坂本さんは「選手たちはアウェーの中でよく勝てたと思う。本当に良かった」と最大の賛辞を贈った。
2022年のヘッドコーチ就任から、坂本さんが常に掲げているのが「サインバスケの構築」だ。これまでの代表チームは、選手が個々の身ぶり手ぶりでプレーする時代が続いていたというが、「それだと音のない世界では意思統一が難しい。みんなが同じイメージを持って試合ができるよう、共通の手話を用いたサインバスケをスタンダードにしたい」と、7月に新得町で実施した合宿などで取り組んできた。
今大会でも試合中、選手たちは積極的に手話でコミュニケーションを取り合い、白星をたぐり寄せた。坂本さんは「リバウンド時の動きなどを伝える際、サインバスケを意識してもらった。すごく良い効果は出ていた」と手応えを感じている。
初の世界一へ「また頑張る」
日本代表の目標は、来年東京で開かれる「デフリンピック」で初の金メダルを獲得すること。「アジア太平洋選手権を優勝し、やっとスタートラインに立てたと考えている。ここからまた頑張っていきたい」と坂本さん。悲願成就に向け、選手とともにさらなる努力を重ねていく。
<デフバスケットボール>
デフ(Deaf)は英語で耳が聞こえないという意味。女子代表選手は、聴力レベルが55デシベル以上の聴覚障害者で構成されており、補聴器の着用はできない。そのほか、試合において一般的なバスケットボールとルールの違いはない。
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