人工ふ卵・育雛のライチョウ7羽 中ア駒ケ岳へ移送 長野県

ライチョウが入った段ボールを背負って運ぶ環境省職員ら
環境省は17日、長野県内外の動物園で増やした絶滅危惧種で国の特別天然記念物ライチョウのひな7羽を、中央アルプス駒ケ岳へ運んだ。2015、16年に北ア・乗鞍岳で採卵し動物園へ導入した卵から人の手で増やした個体で、山に移送するのは初めて。国内生息数の一層の減少に備えて技術確立を目指す野生復帰として実施した。ひなは山頂直下に設けるケージで1週間ほど飼育し、慣らせた後に放鳥する。
運んだのは人工ふ卵・育雛した市立大町山岳博物館(大町市)の5羽と那須どうぶつ王国(栃木県)の2羽。中ア千畳敷まで車とロープウエーで移送し、登山道は関係者がライチョウを入れた段ボールを背負って運んだ。ケージでは元気な様子で餌をついばむ様子が見られた一方、移送中に同博物館の3羽が死亡。同省は「高温になり死亡したとみられる」とした。
ライチョウは高山帯のみに生息。その数を大きく減らし、同省レッドリストで絶滅危惧IB類(近い将来、野生での絶滅の危険性が高い)に指定される。捕食動物の増加や温暖化による高山環境の減少が懸念され、麓で増やしたライチョウを山へ放す野生復帰の確立が急務で「保全活動の最終目標」に位置付ける。
野生で生息するには、餌の高山植物を消化する特殊な腸内細菌の獲得や寄生虫への耐性が必要。将来的な野生復帰を目標に15年から動物園で増やした個体は卵由来のため、野生では母鳥から引き継ぐ腸内細菌などが途切れて山に放せなかった。だが中アに生息地を取り戻す「復活作戦」に伴う研究で、人の手を加えて卵由来の個体も腸内細菌などを獲得できるようになった。
今後の焦点は、放鳥したライチョウが生き延び、来年の繁殖と子育てに成功するかどうか。事業を指揮する信州大学名誉教授の中村浩志さん(77)は「技術確立できれば絶滅しそうになった山にライチョウを放せる。長年の夢が実現できそう。来年はもっと多くの個体を運びたい」。同省信越自然環境事務所の小林篤専門官(37)は、中アの生息数は成鳥のみで120羽以上とし「復活は目前だ」と成果を強調した。
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