個人宅の”温泉離れ”止まらず 「引き湯」ピーク時の6割 長野県諏訪市

諏訪市上諏訪地区の個人宅に見られる温泉貯湯タンク
長野県諏訪市が市内の個人宅や共同浴場、旅館などに温泉を届ける温泉事業で、個人宅の”温泉離れ”が止まらない。2022年度末の契約件数は1588件で、ピークだった1992年度の約6割に減少した。主要給湯区域の上諏訪地区で人口減少と高齢化、核家族化が進み、温泉料金への負担感が増していることが要因。市と契約すれば、自宅で一日中いつでも温泉に入ることができる全国でもまれな諏訪湖畔の温泉地だが、豊かに湧き出す温泉が「ぜいたく品」になりつつあるようだ。
個人宅向けの契約形態「一般給湯」は、1992年度の2611件をピークに減少が続く。2022年度は新規加入が2件だった一方、給湯契約の解約は54件に上った。市水道局によると、年金生活に伴う経済的負担や、死去や転居で空き家になった場合に家族が廃止を申し出るケースが目立つ。建物の湿気対策も必要なため、建て替え時に解約する事例もあるという。
給湯可能な上諏訪地区は、市内でも人口減少と少子高齢化が急速に進む地域で、水道局は「契約件数の減少は構造的な課題」と話す。温泉事業は22年度決算で3700万円の利益を計上したが、加入者の減少は給湯収益の減少にもつながっており、「数年以内には赤字になる可能性がある」と指摘する。
市は13年度、一般給湯の加入金を約54万円減額して20万7900円とした。空き家・空き地バンクで温泉付き物件を紹介し、ホームページで加入の手続きや費用を解説しているが、減少に歯止めはかかっていない。一方、共同浴場を魅力として利活用を模索する市民グループが出てきた。市は収入確保策として、温泉熱発電の実証実験を「あやめ源湯」(湖岸通り)で行い、来年度以降に本格導入の可否を判断する予定だ。
上諏訪地区の70代男性は「この近所ではここ数年で5、6軒が温泉をやめた」と話す。温泉を暖房の熱源としても活用する男性は「行政の個人宅への引(ひ)き湯は全国に誇る財産。年金生活なのでいつまで続けられるか分からないが、温泉文化として残しておきたい」と語った。
◇諏訪市の温泉事業◇ 配湯開始は1946(昭和21)年。市は、乱掘による温泉資源の枯渇を防ぐため、源湯所有者との温泉統合契約を進め、87年までに終了した。行政が天然温泉の供給者となり、個人宅や共同浴場に給湯するサービスは全国的にも珍しく、隣接する下諏訪町でも行われている。諏訪市の温泉料金(2カ月分)は2万3760円、下水道費用が7922円。加入金、貯湯タンクの設置、配管工事の費用も必要になる。
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