庄内―東京 2時間半で 「中速鉄道」実現探る

阿部社長(左)と曽根教授(中央)が中速鉄道の可能性を語り合った対談
酒田市などによる「鉄道高速化講演会」が11日、同市の東北公益文科大公益ホールで開かれた。フル規格新幹線と在来線の間の時速130―200キロ程度で運行する「中速鉄道」をJR陸羽西線に導入することで、低コスト、短期間で庄内―東京間を2時間半程度で結ぶ構想を軸に、工学院大の曽根悟特任教授と、交通計画コンサルティング「ライトレール」の阿部等社長の2人が講演と対談で、実現の方策を探った。
市と陸羽西線高速化促進市町村連絡協議会(会長・丸山至酒田市長)が主催した。阿部社長は今年2月に同市で講演した際、わが国には皆無に近い「中速鉄道」で庄内―東京間を約2時間半で結び、建設コストはフル規格新幹線の5分の1程度、建設期間は7年程度という構想を発表し、反響を呼んだ。今回はこの中速鉄道の実現可能性を掘り下げる狙い。庄内、最上両地域の約400人が参加した。
わが国の中速鉄道推進の第一人者である曽根教授は講演で、「高速鉄道技術を持っている国で中速鉄道がないのは日本だけ」とし、国内では高コストなフル規格新幹線(最高時速260キロ)と、低機能な在来線(同130キロ未満)の両極化が、鉄道全体の発展を阻害している現状を指摘。一方、中国は中速鉄道のネットワーク拡大をけん引力に、国内の鉄道全体の発展につなげ、日本のフル規格新幹線に相当する高速鉄道の軌道延長は既に日本の2・4倍に達している例も紹介。庄内―東京間は中速鉄道の導入で「2時間40分台後半」、建設期間は「7年、またはそれより短くできる」とした。
阿部社長は講演で、2月の提案の走行・停車時間などをさらに精査し、より現実的なプランとして、庄内―東京間を「2時間45分」で結ぶ方法を提案。空力特性に優れた新車両の導入や福島―米沢間の板谷峠の新線建設など、考え得る速度向上・安全・効率化の各対策を結集するもので、概算事業費は新車両建造を含め「数千年億円程度」とした。そして、「羽越新幹線は、建設の優先順位が仮に中位だとしても、着工は2080年ごろ、建設費は1・3兆円。山形新幹線は県の発案で実現した。同じようにこの地域からの発案で中速鉄道の第1号を実現し、全国に広げて」と訴えた。
その後、温井亨東北公益文科大教授の司会で、曽根教授と阿部社長が対談。「中速鉄道は日本で一つのきっかけで急速に広がる可能性がある」(曽根教授)、「日本には高価格鉄道(フル規格新幹線)と低機能鉄道(ミニ新幹線を含む在来線)しかない。中速鉄道は相応の機能があり、低価格。県も検討を」(阿部社長)など熱く意見を交わした。
丸山市長は講演後、「中速鉄道が日本全体の鉄道ネットワーク整備に必要、かつ有効な手段という認識を強めた。今の整備新幹線の方針を変えていく必要があるのではと、国や県に理解を求めていきたい」と話した。中速鉄道の実現に向け、市などはライトレールに、建設コストや運行時間などを精査する調査を委託しており、来月初旬ごろまでにはまとめ、要望活動などの基礎資料にしていくという。
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