ベトナム人実習生へ感謝の振り袖 足寄・吉村牧場 社長からの贈り物
足寄町の吉村牧場(吉村進社長)で6年間、特定技能の在留資格で働いたベトナム人女性2人が1日、帯広市内の帯広川河川敷の桜並木で振り袖姿の写真撮影に臨んだ。残り数カ月で母国に帰国する2人へ、吉村社長(65)からのプレゼントだった。

念願の振り袖姿で撮影する(左から)ハウさんとキョウさん
ファン・テイ・ハウさん(30)とヴーティ・トゥイ・キョウさん(25)はベトナム北部出身。「酪農の仕事は田舎で育った私に向いているかも」と酪農の現場を選び、2017年7月に吉村牧場へやって来た。
最初は文化の違いに戸惑った2人。食事の時間がベトナムよりも2時間ほど遅い日本で、生活リズムを整え、早朝の作業に慣れることには苦労した。学んできた日本語も通じなかった。
それでも、とにかく勉強熱心だった2人は、吉村社長に注意されることも「自分たちが成長するため」と前向きに受け止め、休日は吉村社長の妻道子さん(46)の食事作りを手伝いながら日本語を習った。
「仕事への責任感は誰よりも強い」(吉村社長)2人は、昨年7月に特定技能の在留資格を取得。現在は餌やり、哺乳、分娩(ぶんべん)の補助、搾乳などさまざまな仕事を難なくこなしている。今では「牛の調子が分かるようになった」「牛をかわいく感じる」とほほ笑む。
6年勤務、帰国へ
そんな2人にもベトナムに家族がいる。3人きょうだいの長女キョウさんは「両親からずっと帰ってきてほしいと言われていた」。ハウさんもコロナの影響で、ベトナムの母に預ける息子2人と6年間会えていない。「そろそろ家族との生活を」と帰国を決めた。
「責任感を持って6年働いてくれた2人には感謝しかない」と吉村社長。キョウさんがよく口にしていた、「日本で一度でいいから着物を着たい」という夢をかなえることに決めた。
1日、早朝の仕事を普段通り済ませてから、市内の京屋呉服店(宮本征和社長)で、3週間前に選んだ念願の振り袖に腕を通した。着付けやヘアメークを終え、鏡で自分の姿を見ると「びっくりするくらいかわいくなっていました」とキョウさんは驚きの表情。ハウさんも「帯の飾りがかわいくて驚いた」と話し、お互いの姿を見て「レブ(きれい)」と褒め合った。
「一生の思い出」
桜並木での撮影でハウさんは「こんなにいっぱいの桜を見たのは初めて」と目を輝かせた。キョウさんは「一生残る日本の思い出です」と満面の笑み。吉村社長は「キョウは子どもみたいだ」とからかいながら、目を細めて撮影を見守った。
ハウさんは6月、キョウさんは7月に帰国予定。これまで家族に仕送りをしつつ、貯金してきた資金でそれぞれネイル店、ケーキ店を開きたい、と帰国後の夢を語る。吉村社長は「2人がいなかったら牧場はここまでもっていなかった」と2人に感謝、道子さんも「本当の娘のような2人の夢を応援したい」と背中を押す。そして「いつかベトナムに行くときは案内してね」と2人に笑いかけた。
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